東方輪廻殺
第三話 新地

「さて…これからどうする?君を認めてくれる世界を見つけ暮らすために何をする?」

牢姫が問いかける

(そうは言っても…自分で自分の能力を使えないんじゃなぁ…)

以前の私は何の問題も無く能力を行使できていたのだろう
過去の虚像を見れば明らかだ しかし今は使えない…何故だろう…?

「牢姫…以前の私はどうやって別世界へ移動してたの?」

「そりゃあ君自身の……あぁそうか…今の君には使えないという事か…」

察するように牢姫が言う

「…悔しいけどその通りよ…」

「なら私が送ってあげよう」

「そんな事出来るの?」

出来るとすればやはり牢姫は時空間に干渉できる術があるという事
私の予想以上に凄い奴なのかも…

「当然さ 私自身異次元へ跳躍できるんだ 他の者も異次元へ飛ばすことが出来る」
「君は別の世界で…色々な事を体験して能力を扱えるようになれば良い」

「簡単に言うわね…能力があるなんて実感も無いのに…」

今の私はいきなり「あなたは能力者です」と言われてるようなものだ
例えそれが真実で本当に使えるとしてもすぐに使える筈が無い

「だからじっくりと使えるようにするんだ……そうだなぁ…なるべく安全な世界へ送ってあげるよ」

「それは助かるわ 夢…いや、前の世界みたいに意味不明ですぐ殺されるような世界はごめんよ」

「ハハハ…命の危険に晒されてる分生き延びる為に死に物狂いで学習し使えるようになりそうだけどね」

そっちの方が早くてお手軽だと言わんばかりにカラカラと笑う

「右も左も解らない内に殺されるのよ?学習以前の問題よ」

「でも今の君なら少しはそういう世界にも対応できるだろう?」

「解ったところで結果は一緒よ どうせ死ぬわ」

大体そういう世界でどう過ごせと言うのか?

「………そうだね…じゃあそろそろ送るとしよう そして君自身の力を使いこなすんだ」

「わかってるわよ…使えないのと使わないのとじゃ違うからね…」

「ふふ…それじゃ…いってらっしゃ〜い」

牢姫がそう言うと足元にスキマのようなものが開かれる

「え?…ちょっ…うわあぁぁぁぁぁ...」

そうして私は別世界へ送られ ついでに意識は途絶えた

「さて…では私も行動を開始しますか…」

誰も居なくなった境内で一人 牢姫は呟く…



















「うぐっ!痛〜〜〜っ…(泣)」

地面に思いっきり叩きつけられる
しかも運悪く岩の上だったので相当痛かった

「はぁ…もう少し丁寧に送ってよ…頭打って死んだらどうするのよ…」

牢姫に愚痴るも既に此処は別世界 本人には当然聞こえておらず返事は無い

「さて……なるべく安全な世界に送ってくれるという事だったけど…警戒するに越した事は無いわね」

どんな世界であれ右も左も解らないのは当然だ
周囲を警戒しつつゆっくりと立ち上がる
森の中のようだが…傾斜が激しいから山だろうか?

「あちこちに生き物の気配…まぁ山の中(?)だから当然か…」

複数の気配がある事に少し安堵する 自分一人だけじゃないという事の証明だからだ
思えばあの妖怪の山は異常だった 何も気配が無かったのだから…

「…とりあえず食糧の確保をしよう 確保したら…どうしようかしら?」

適当に山の中を歩き回る 果物があれば万々歳なのだがまずは水だと思い水辺を探す

「そういえば戦う術が無いわ…以前の私はそういうのどうしてたんだろ…牢姫に聞けば良かった…」

ふと自分は戦えない事に気づき身の危険に恐怖する
より一層周囲を警戒し探索を続ける

「早いトコ戦えるようにならないと身を守れないわね…能力よりもまずはこっちの問題からかなぁ?」
「よし…食糧の確保をしたら修行ね…最低でも狩りができるくらいにはならないと…」

今の自分は圧倒的に弱い立場…何時狩られるかわからない
どんな相手に襲われても生き延びるのを目的に修行する事に決めた

色々考えて探索を続けてようやく湖を見つけた 大きな湖だ

「水だ…!やった……ちゃんと飲めるかしら?」

湖を覗き込む 綺麗に澄んでいるし魚も沢山泳いでいる
特に害は無さそうだった

「………水の中が見えるだけでこんなに嬉しいのは何故かしらね…」

ふとあの黒い海を思い浮かべた あの黒い水はかなりの嫌悪感があった
少量手で掬っても底が見えることが無かった…まるで墨汁のような水だった
しかもあの海の中にはおぞましい蟲や魚が沢山居たのだ 何故か鳥も居たが…

でも今目の前にあるのはあんな黒い海なんかでは無い綺麗な湖
手で水を掬い軽く舐めてみた

「………毒ってわけじゃ無いようね…」

そもそも毒だったらこの時点で死んでるか?__そんな事を思いつつ今度は掬った水を飲む

「…ふぅ…ちゃんと飲めるようね……しばらく飲み水には困らないかな…」
「………もっと飲もう…」

ゴクゴクと水を飲み続ける
水は確保できた 次は食糧と寝床だ 湖同様にすぐに見つかると良いなぁ

「湖の魚はー…今は無理かぁ…」

この湖は見た所相当深い 底が見えないから間違い無いだろう
釣り道具が無い以上魚を獲るには泳いで獲る事になるが私は魚より速くは泳げない
結果此処の魚を獲るのは無理だった


「さてと…探索続行ね」

十分に水を飲み
食べられそうな木の実等を探しつつ寝床になりそうな所を探し回る事にした


「おっ?いい感じの洞穴発見」

湖から少しして洞穴を見つけた
湖から近いし出来れば此処を寝床にしようとゆっくりと慎重に中を探索する
こういった場所には何かが棲んでいるだろうし警戒を怠るわけにはいかなかった

中は結構広かった 奥まで行くと何かが眠っていた

「そりゃあ既に住民が居ますよねー…はぁ…此処は諦めるかぁ…てかコレなんだろ…」

コレ=眠ってる何か もう滅茶苦茶でかい
この洞穴の入り口より大きいんだが…どうやって洞穴の中に入ったんだろうか?

見上げてると眠ってる何かが起きたようでこっちを見た
私を見て様子を伺っている

「ドラゴンかよ………や、やぁ…起こしちゃったかな?ご、ごめんね?」

笑顔を作りドラゴンに優しく話しかける
そして私はゆっくりと振り向いて…

「お邪魔しましたぁぁああああああ!!!!!」

そう叫びつつ全力で逃げた









「はぁっ……はぁっ……よし…追ってこないな……はぁっ…」

追ってこないのを確認し安堵する そもそも相手にされてたかどうかもわからない
湖まで逃げすぐ近くにある木にもたれながら休む

「アレの存在で少なくとも妖怪や幻想種が存在する事が証明されたか…ますます戦う術が欲しいなぁ…」

アレ=ドラゴン
犬に勝てるかどうかもわからないのにアレに挑むのは無謀と言わざるを得ない

「でもあそこ結構広くて湖から近い良い場所だったのになぁ…あの場所欲しいなぁ…」

まぁ無理なのはしょうがない 別の場所を探す事にした


今度は小さな小屋を発見した

「小屋…って事は人間が居るって事よね?少なくともそれに準ずる何かが」

もしかしたら人里なるものがあるかも?だとすればこんな山からとっとと出て里を探すべきか?
そう思いつつ小屋に近づきノックする

(気配は無い…けど あの妖怪の山のように感じられないだけかもしれないし…もう少し待ってみよう)

再度ノックし誰かが出るのを待つ………がいくら待っても出てこない

「無人かなぁ?それじゃ入ってみようかな」

ドアを開ける 鍵が掛かってない事から誰も住んでないのだろうか?

中は意外と整理されていてそんなに汚くはなかった 少し埃が溜まってる程度だ
そんな小屋の中を見てやはり誰も住んでいないのだろうと確信する

「誰も使ってないようだし…此処を寝床とするかぁ〜…使えそうな道具も色々ありそうだし」

早速物色する 小屋にあったのは…
木材、ロープ、鋸、バールのようなもの、ハンマー、奇妙な形をした筒のような物
木箱(中は空)、椅子、布、釘、黒い玉(火気厳禁とあるが…何だろう?)
黄色い砂が入った袋、軍手、槍、鉄板、管が付いた変な機械、臭いがキツイ液体が入った缶

「ん〜…」

やはりこの世界には人が存在するんだろう 軍手の形はまさに人のそれだし
黒い玉にあった火気厳禁の注意書き…
そして鋸やハンマー等の物から見て人が作った物だというのが解る

「武器になりそうなものがあったのは運が良かったわね」

ある程度の小動物なら此処にある武器で狩りができるだろう

「槍はー…使ったこと無いし 鈍器として使えるハンマーは携帯しよう」

丁度殴るのにいい感じの大きさのハンマーを装備していく
[霊禍の攻撃力が40上がった! 「撲殺巫女霊禍ちゃん」の称号を得た]
……なんか電波的なものを受信したが気のせいだろう

鋸はちょっと携帯するには大きすぎるし槍は扱えない
バールのようなものは……ダメだ…鈍器としてしか使えそうにない

「他は…何だろう?使い方が解らないな…」

まずは奇妙な形をした筒のような物を手にとる
まるでトンファーのような形をしているが所々装置のようなものがある
しかし調べても全然何かがわからない

次に黒い玉 小さな袋にあったもので無数にある
火気厳禁らしいし…火薬か何かだろうか?
よくわからない…

次に黄色い砂が入った袋 この黄色い砂は何だろう?
わざわざ袋にしまうからには黒い玉のような普通の物では無いんだろう
こちらは火気厳禁では無いのかな?よくわからない

次に管が付いた変な機械 筒のような物から管が生えているような感じだ
管の先端には何やら奇妙な形をした筒にもあった装置が付いている
見た感じ何かを発射する何かだろうか?よくわからない

最後に臭いがキツイ液体が入った缶 流石に飲む気にはなれない
何かわからないので放置する事にした

「う〜ん……調べてもわからないものはわからないわねぇ…」
「さてと…少し疲れたし 一眠りしよう…食糧はそれからね…」

まずは休もう そう決めて 柔らかい布を纏い寝ることにした










「さて…では私も行動を開始しますか…」

霊禍を異世界へ送った後牢姫は呟く

「しかし記憶を失うとはなぁ…余程ショックな事が起きたのか…色々と台無しになっちゃったなぁ」

先程の何も知らぬ霊禍を思い 残念そうに呟く

「でも問題は無い まだ霊禍は生きている」
「今問題なのは…君が此処に来た事だねぇ…クク…」

牢姫は何も無い空間に向かってそう話しかける

「………気づいてたのね…」

何も無い空間から八雲紫が現れる

「当然」

「何時から気づいていたの?」

「最初からさ…気づかれて無いと思って私等を見てたその様子は実に滑稽で笑えたよ」

「………」

それを聞いた紫は手に持つ扇子で顔を隠す

「それで?何の用かな?此処には何も無いよ?あ…もう一度過去の虚像を見たいのかな?」

「単刀直入に言うわ…あの子を引き渡して貰おうかしら?」

「あの子って誰の事かな?」

「とぼけないで 霊夢の事よ」

「霊夢なら君がよく知る幻想郷に居るよ 好きにすると良い」

「………あなたが霊禍と呼んでた霊夢よ」

「残念だけど霊禍が何処に居るかは知らないよ」

「嘘吐き あなたが異世界へ送ったじゃない」

「私はあの子を直接霊禍と呼んだ憶えは無いなぁ…」

「あなたの『牢姫』という名はあの子が付けてくれたんでしょう?」

「そうだ…過去にね」

「なら異世界へ送ったあの子は霊禍って事じゃない」

「残念だけど私は過去出会った者と今出会った者は例え同じような存在でも別人扱いしてるんだ」
「少なくともあの子は私にとってまだ霊禍と呼べるような存在では無い 過去のあの子はそう呼べたけどね」
「君も時空間…いや…次元に干渉できるなら少しはこの考えに共感してくれると思うんだけど?」

「生憎と私はそんな考え微塵も無いし次元干渉なんてできないわ さぁ…あの子を引き渡しなさい」

「引き渡すも何もあの子は私の所有物では無い」
「私の意思で隠してるわけでもない 欲しけりゃ勝手に探して連れて行けば良い できるものなら」

「………」

紫が影を殺気を込めて睨む
これ以上舐めた口をきくなら殺すぞ?と言いたげだった

「ふふ…私が気に入らないようだね?」

「当然よ 不愉快だわ」

「なら何故力づくで私を従わせない?君なら雑作も無い事だろう?」
「まさかそれすら出来ないとか?これはこれは…妖怪の賢者様ともあろう方が滑稽なものだ」

紫を馬鹿にするようにカラカラと牢姫は笑う

「…最後よ…あの子は何処に居るのかしら?」

「そんなにあの子が気になるのかい?もう君の幻想郷とあの子に縁は無いだろう?」

「だからと言って野放しにはできないわ」

いずれあの子の(わざわい)は幻想郷に牙を向く
紫はその事を懸念し霊禍を探しているのだ 確実に始末する為に

「そうか…なら送ってあげようか?霊禍の居た世界に」

「…?やけにあっさりと…何を企んでいるの?」

「今、君に対しての事は何にも企んじゃいないよ…どうする?行くの?行かないの?」

「さっさと送りなさい…私は忙しいの」

「忙しい中わざわざ会いに来てご苦労様」

そう言って手をかざし スキマのようなモノが開かれる

(この私に対してスキマなんて…皮肉なのかしら?つくづく嫌な奴ね…)

「その先が霊禍の居た世界だ」

「そう…協力ありがとう…ではごきげんよう」

「じゃ気をつけてね」

紫がスキマのようなモノに入り異世界に飛ぶのを見送る
それを確認しスキマのようなモノを閉じる

「クックック……妖怪の賢者様ともあろう方がこうも騙されるものかねぇ…余程焦ってると見える」
「確かにその世界は霊禍が"居た"世界だ 何せ霊禍本人の紹介だからねぇ…堪能しなよ 賢者様?」

「では…私は私の目的の為に動くか…まずはあの世界へ行かねばな…」

そう言って影は境内から消えた










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あとがき

第三話終了 いや〜平和回でしたねw

こういう何気ない生活の様子を書く事が後に思い出やら伏線回収やらに繋がるので
しっかりとその日常を書いていきたいですね

今回注意した所は今の禍たんは弱いって点ですね
ある程度東方SSを読んでみたんですが よくあったのは
いきなり別世界へ行った後不老になり能力が何故か閃く→なんとなくで使えたので練習及び修行する
→修行したので雑魚相手は余裕だぜヒャッハー
→時間が年単位で吹っ飛ぶ→大妖怪相手でも引けを取らなくなる
※えーりん(月の民)とかすわこ,かなこに関わったりゆかりんがやたら絡む
※かぐやともこたんとかも余裕があれば絡む(大体主人公がかぐや姫見ようかなって流れ)
※さらに余裕があれば鬼(すいかとかゆーぎ)が喧嘩売ってくるので渋々受けるも生き延び一目置かれる
※幻想郷到来した場合殆どが紅魔組に関わったりする
しばらくしたら何だかんだで大物になって幻想郷で適当に過ごす

そんな展開が多かったですね〜 いや悪いとは言わんけど
私はそういうのはパターン化されてるのかな?と思ってるのでいきなりヒャッハーしないように注意しました
突如ピンと来たので能力が使えましたってのは何か…納得できないのよw
だから禍たんはまだ自身に能力があるってのは半信半疑です ロクに扱えてないしねw
それと今後の展開ですが東方キャラに出会えるかどうかも怪しいレベルですね〜
どうやって一般人出そうかなって考えてるレベルですし
山の中からいきなりサバイバル状態ってのはマズかったかなぁ…
まぁそんなこんなで今の所禍たんは戦闘能力皆無です 一般人以下 でも潜在能力は凄まじいですよ?
その内ヒャッハーしたいですね 少なくとも洞穴のドラゴンは倒したいですねw

今後の展開も先程述べたテンプレ的なモノにはならないと思います それを期待してたらゴメンね
いくら先を考えてないと言ってもどういう世界観でどう動かすかはある程度決めてるのでまず無いかと
まぁ東方キャラ出したかったらそういう展開にするかもしれないししないかもしれない
というか禍たんはMUGENキャラでもあるから鬼巫女とか白麗とかも出してみたいですね〜
今出したら間違いなく瞬殺される状態ですけどw
というわけでどちらかと言うと東方キャラよりMUGENキャラ出したいですハイ

さて、小屋で見つけた禍たんが何かわからなかった物をネタバレしちゃいましょう
小屋の物は多分活躍しませんw だから別に何かをバラしても問題無いだろう
今後の事なんて全く考えてないから何とも言えんが…

奇妙な形をした筒のような物
これは銃です ライフルのような長いタイプの物
弾が無いので使えません

黒い玉
これは火薬です 熱したり強い衝撃を与えると爆発します 結構な威力ですので取り扱いに注意
投げつけるだけで武器として使えます

黄色い砂が入った袋
黄色い砂は砂金です そんだけ 勿論お金になります

管が付いた変な機械
火炎放射器です ガソリンを筒に入れて管の先にある引き金を引けばそこから炎がブワーっと出ます

臭いがキツイ液体が入った缶
液体の正体はガソリンです 缶は蓋してあるので気化はしてません

役に立つものは〜…殆ど無いですねw
さ〜てと…どうやって一般人出そうかなぁ…そして何時能力を開花させようか…


そんでロキちゃんが独り歩きしだしましたw
こいつからまともな情報引き出させるのは相当面倒くさいってのが伝わったでしょうか?
教えてくれる時はすぐ教えるくせに何かとふざけたりもったいぶる事があります うざい奴ですね〜w

当然牢姫によって紫が送られた世界に霊禍は居ません ゆかりんドンマイ!
居ない事を追求しても『霊禍が居た世界』と言ったじゃないか!と過去の虚像付きで反発します

さてさて…こちら側でも色々と伏線張ってますが回収できるかなぁ…w
ロキちゃんの目的は何でしょうね?

それじゃ何時まで続くか…完結できるかどうかは知りませんが 次話あとがきで会いましょう


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