東方輪廻殺
第十七話 進撃

「さて…ようやく人里に到着しましたが…」
「稗田家は何処でしょうかね…霊禍の話によれば資料ならあそこらしいですが」

人里に着いた幽玄が散策をする

(食糧はあそこで売買するようですね…資料を入手したら買いましょう…)

「ん…?おい、そこの者…待て」

稗田家を探しながら徘徊していると急に声を掛けられる
振り返ればいかにも門番してますというような格好の男が二人居た

「…何か?」

「お前見ない顔だな?どっから入ってきたんだ?」

門番が怪しみつつ問いかける

「答える必要はありません」

「………おい、お前慧音先生呼んでこい」

「あ、あぁ…わかった…」

一人がもう一人にそう促し走り去って行った あの方角は寺子屋だ

「身元が解らない奴を放置するわけにはいかないからな…ついて来てもらおうか?」

残った門番が話しかける

「拒否します 急いでるので」

「それは困る こっちも仕事なんでね」

「そうですか…お疲れ様です」

「慧音さん!こっちです!」

どうやらもう駆けつけてきたようだ
声をした方を見れば先程の門番と髪の長い女性が走って近づいてくる
三人を見据えて様子を伺う

「全く忙しいのに…この男か?」

慧音は能力の応用で幽玄の歴史を見ようとするが気づけば居なくなっていた

「…あれ?  ガッ!?」

突如背後から思いっきり吹っ飛ばされる
元居た場所を見れば幽玄が立っているのが確認できた
そしてその確認と同時に門番二人が力無く倒れる

「な…!?何を…がはっ!」

「いきなり干渉されかけたので貴方達を敵とみなし攻撃しただけです」
「もう既に門番二人は始末しました 貴女を即死させなかったのは質問があるからです」
「稗田家は何処にありますか?この里に詳しいようですから絶対知っているはずです」
「正直に答えてくれればその苦しみから解放してあげましょう」

淡々と語る幽玄 冷たい目で慧音を見下ろす

(ぐっ…体内の霊力と妖力が…)
「わ、私はただ…お前の…過去を見ようと…」

「信用できません それに一度干渉を許せばそのまま破滅へ繋がる能力かもしれませんからね」
「聞いた話では死を操る能力もあるとの事じゃないですか 貴女がそれだったら危険でしょう?」
「それに私は弁解を求めてはいません 稗田家の場所を教えなさい 時間の無駄です」

(まさか…阿求を狙っているのか!?)
「誰が…教えるものか…!」

決して何も教えない意志を見せるようにキッと幽玄を睨む

「そうですか…それは残念です では死になさい」

そう言って強烈な殺気を出し動けない慧音のもとに静かに近づく

(くそ!さっきから何故動けないんだ!?)
「く、来るな!」

目の前まで迫り幽玄は慧音の額にヒタリと手を当てる

「はっ!」

その掛け声と同時に慧音は倒れビクビクと痙攣する

「あぁぁっああぁっぁあああ!?」

「今貴女の体内機器の大半を狂わせました もう貴女の内臓は身体の欲求を満たす事は無いでしょう」
「さらに貴女が持つ霊力等の力も制御不可能な程暴走させています もう何もできませんよ」
「持って3分…いや貴女は人間では無いから5分くらいは持つかもしれませんね」
「まぁその間…苦痛に塗れて死になさい それでは」

そう告げ幽玄は慧音の許から去っていった

「あああぁぁああああぁぁぁああああ!!!!!!!」

激痛で叫ぶ もう叫ぶことしかできない
動こうとすれば思いもよらぬ部位があらぬ方向へ動きまた別の痛みを引き起こす
体内の霊力が暴走し痛覚をより強く…より激しく感じさせる
妖力も暴走し意識を覚醒させ気絶する事を許さない 体液が荒れ狂いあちこちから血が吹き出る

「あ……あぁ………ぁ………」

叫ぶ事もできなくなった
目と口と鼻から血が大量に溢れ出る 眼球が地に落ちるのが理解した瞬間
内臓が体液の圧迫で破裂するのを感じ 慧音は完全に動かなくなった







「ふむ…ここが稗田家ですか」

周りと比べて大きめな屋敷を見つける 門に「稗田」の名が刻まれてる事から間違い無いだろう

「使える情報が置いてあれば良いのですが…」

そう一人呟き 幽玄は稗田の屋敷に侵入する

「っ!?だ、誰!?」

「私の名は幽玄…人間です 資料を頂きに来ました」
「死にたくなければここにある全ての情報を渡しなさい」
「貴女の記憶でしか残っていないというなら無理矢理にでも教えてもらいますよ?稗田阿求」

殺気を込めて幽玄が睨む
それに怯みつつも阿求は反論する

「うっ…そ、それはできません!」

「そうですか…なら邪魔ですので消えなさい」

「…えっ?」

次の瞬間阿求はトンッと額を突かれ痛みを感じる間もなく身体が爆ぜて死んだ

「では資料を探し…ついでに金目の物も頂きましょう…」

そして幽玄は住む者が居なくなった屋敷を模索し始めた





「ふぅ〜…今日も完売っと」

妖怪兎:鈴仙は空になった薬箱を見て呟く
彼女の住む永遠亭は迷いの竹林の中にあるので余程の事じゃない限り
患者という客は来ないのだ だから金欠にならぬようこうして薬を売りに人里へ来る

「さてと…もうすっかり暗いし…帰りますかぁ」

買い物を済ませいざ帰路に就く

「……ん?…血の臭い?」

ふと血の臭いを感じる 嗅ぎ慣れたのかすぐにわかってしまった
気になったので臭いの元を探し臭いを辿る

ある程度進むと二人倒れてるのを見つけた

(いや…よく見れば三人…その一人は……酷い…)

軽傷そうな二人の門番を診て見るが既に死んでいた
そしてもう一人…慧音の方は誰が見ても一目で死んでいるのが明らかだった

「慧音さん………帰って伝えなきゃ!」

そう決意して立ち上がり早々へ帰ろうと振り返ると何かにぶつかってしまい尻餅をつく
何にぶつかったのかと見てみれば黒い服を着た男が鈴仙を見下ろしていた

(この男からも血の臭い!?)

「あ…す、すみません…ウァッ!?」

とりあえず謝罪し立ち上がろうとするとその男に急に突き飛ばされた

「残念ですが貴女をこのまま帰す訳にはいきません…鈴仙・優曇華院・イナバ」
「貴女の体内の氣を狂わせました…まともに動く事も…能力を使う事もできませんよ?」

「あ…な、何で…!?」

鈴仙はわけが解らなかった
見ず知らずの男に殺される理由が全くわからない
激痛と共にひたすら疑惑で一杯だった

「…何故?あぁ…それは稗田家で資料を見たからですよ」
「貴方達永遠亭と私はもはや敵対関係にあります 私がそこの上白沢慧音を始末したからです」
「どうやら慧音と縁のある藤原妹紅は貴女方…というより蓬莱山輝夜と関係があるようですしね」
「ならば恨みを晴らしに来た妹紅に便乗して貴女方全員が来るかもしれませんから敵として見てます」
「貴女の能力も既に解ってます…一つしか無いとは限りませんが私の攻撃を受けた以上もう手遅れです」
「最後に貴女をここまで生かしている理由ですが貴女には伝言をお願いしたい」

「で……伝言?」

「そうです…貴女は永遠亭に帰りそこに居るであろう貴女の仲間達に警告してもらいたい」
「我々に手を出せばその命は無いと…不老不死の存在であろうが関係無いという事をね」
「ここから永遠亭に帰るまで全速力で飛行すれば6,7分といったところでしょうか…」
「では10分の猶予を与えますので伝言お願いしますね?」

幽玄はそう話し鈴仙に近寄る

「ど、どうして…それに貴方は一体…?」

「私の名は幽玄…人間です 私は必要あれば奪いもすれば殺しもします そういう者です」
「我々は既に映姫、小町、慧音、阿求…そして貴女を始末しました」
「余計な労力を消費しない為にも永遠亭の方々には動かないでくれると疲れなくて済みます」
「貴女が人里に居たのは好都合でした…貴女にとっては不幸ですがもうどうでもいいです」
「それでは…しっかりと警告してくださいね?」

幽玄は鈴仙の額に手を当て鈴仙に流れるあらゆる力を制御し操作した
そして鈴仙は幽玄の命令通り永遠亭に全速力で飛んでいった





「………私はそろそろ帰らねばならないのですがね…」

飛んでいった鈴仙を見送った後ゆっくりと振り返り妖怪に話しかける

「あら…遊んでくれないの?こんな美人のお誘いを蹴るなんてつれないわね」

幽香がつまらなそうに言う
しかしその目は得物を見る目で帰す気はさらさら無さそうだ

「私はこれから帰って食事をしなければなりません」

幽玄は幽香を無視するように素通りしとっとと帰ろうとする
しかしそう易々と帰す訳にはいかないと幽香は持っていた傘で攻撃する
だがその攻撃は難なく避けられ反撃を貰う

「…へぇ…思った以上にやるわね…」

反撃を食らって後ずさり血反吐を吐きつつ幽香は笑う

「貴女に構ってる暇は無いんですがね…風見幽香…」

「あら?自己紹介してたかしら?それとも以前会った?」

「資料を見て知っただけですよ…そして見た資料が半信半疑になってしまいました」

幽玄はガッカリしたような表情で答える

「…それはどうして?」

「資料では貴女は強くて危険とありましたが…想像を絶する弱さだったので呆れました」

「言ってくれるじゃない…ならこれを見て同じ事を口に出来るかしら?」

幽香は怒りを顕にし傘の先を幽玄に向ける
幽玄はその様子をやれやれと言った様子で幽香を見つめている

「食らいなさい」

傘の先端から巨大なビームが放たれそこにあったあらゆるものが吹き飛ぶ
ビームの先にあった人里の塀すらも消し飛んだ

「…私をバカにするからそうなるのよ」

幽玄が消し飛んだのを確認し呟く

「貴女の目は節穴でもあるんですね なるほど…平和ボケしていると言われるだけはある」

「な!?」

気づけば幽玄は幽香の傘に乗っていた 一体いつの間にそこに立ったのだろう
そして先程の攻撃はどうやって?思わず混乱してしまう
目の前に居たので我武者羅に攻撃したが反撃を食らって吹き飛ばされてしまった
混乱してたから油断したか…

「ふむ…随分頑丈ですね…強いというのはあながち間違いでは無いようですね」

「くっ!このぉっ!」

人間を一撃で消し飛ばす程の強力な力で腕を振るうも避けられ反撃を貰う
あの速い天狗であろうと避けるのは難しいであろう筈の高速の攻撃を幽玄は次々と難なく避け
避ける度に幽玄は強力な反撃を幽香に負わせる
幽香は肉弾戦だけでなくワープや弾幕、能力で作った植物による罠等も攻撃に織り交ぜるが
全て無駄に終わった 反撃を受け続けて遂に幽香は立つのも難しい程大きく負傷した

「はぁっ……ぐっ…この私が…これくらいで膝をつくなんて…」
(こいつ…私よりも数倍速い…!バケモノか!?)

「ですがやはり貴女のような力ある存在は格下の種族を軽視するようですね」
「まぁ傲慢して隙を作ってくれるのは非常に助かりますが」

幽玄は怯んで動けない幽香にさらに追撃を仕掛ける
幽香は吹き飛ばされつつも弾幕を放って応戦するが全て避けられた
近接攻撃も全て反撃を食らいとうとう弾すら撃てなくなる程になってしまった

「が…ハァっ!…ぐぅ…あ、あんたのような…人間が…居るとは」

「大妖怪というのは全く以って面倒ですね…弱い神よりも耐性が高い…」
「八雲紫もそうでしたが私の攻撃を立て続けに食らってよく生きてるものです」

「…!?…あんた紫を倒したの!?」

「ここの八雲紫かどうかは知りませんが一戦交えましたよ」

その言葉と同時に幽香の腹に今までで一番深い一撃が入る

「これで終わりです」

「あ……か、身体が…ああぁぁっああっあああぁ!!」

幽香は力無く倒れガクガクと痙攣を始めた 慧音の時と同じように…慧音以上に激しく痙攣している

「今の一撃で貴女の体内機器を少し狂わせその"少し"以外は停止させました」
「さらに貴女に宿るあらゆる力を暴走させました」
「それでも貴女がまだ生きているのは貴女が本当に頑丈だからとしか言えません」
「では私はこれで さようなら…風見幽香…」

「わた…が……け…………だ………てない…」

幽玄が語っている間に幽香はみるみる衰弱する
血反吐は止まらずバキバキと骨が折れ髪も抜けていく

「………」

幽香はしばらく蠢いていたがやがて完全に動かなくなった








永遠亭
迷いの竹林の中にある大きな屋敷で
そこには鈴仙の師である永琳とその永琳が仕える姫君、輝夜が住んでいる
そして兎達をまとめる因幡てゐも住み輝夜を宿敵とする妹紅も輝夜と戦う為によくそこに集まる
今日は都合良くその全員が集まっていた
鈴仙は幽玄の攻撃で氣を狂わされ命令通り永遠亭に帰り着く
尋常じゃない様子で鈴仙が帰ってきた為一同はボロボロの鈴仙を心配した

「し…しょぉ…」

「喋らないで」

永琳が必死に治療を試みる
しかし根本から狂わされているのかいくら薬を投与してもすぐに無駄になる

「あの……男に…手を出せば…命は…無い……です……」
「あいつ…は……言いま…した……師匠達…のよう…な不死身だ…ろうと……殺せる……と」
「決して……動かな…いで……下さい……私…師匠達に…は死んで欲しくない」

苦しそうに息をしつつ皆に警告を発する鈴仙

「鈴仙…慧音は?慧音は無事なのか?」

「けい…ねさんは……すでに……」

「そうか…」

「もこ……うさ…ん…も……あいつに……手を出して…は…………」

そこまで言って鈴仙は口をパクパクと動かし言葉を失う
それでも警告しようと腕を上げて妹紅を行かせまいとする鈴仙
しかし急にだらんと腕を落とし 鈴仙は息を引き取った
それを見届け輝夜は立ち上がり外へ出ようとする

「………姫…何処に行かれるのです?」

「決まってるじゃない…イナバを殺した幽玄とかいう奴を殺しに行くのよ」

「私も行く…慧音は私の数少ない理解者だった…許さない…」

輝夜の言葉を聞いて妹紅も輝夜について行くように立ち上がる

「顔が解って無いのに行くのですか?」

「黒い服を着た男でしょ?どうやら血の臭いも付いてるらしいし 急げば探し出せるわ」

「どうしても行くんですね?」

「当たり前だ 手を出すなと言われてハイそうですかと納得なんてできるか」

「……はぁ…わかったわ…なら私も行く…文句は無いわね?」

「勿論よ永琳 私達を怒らせた事を後悔させてやりましょう」

「てゐ…貴女は…どうする?」

「………私は此処で帰りを待ってる」

「そう…じゃ…行って来るわ」

永遠亭から3人の人影が夜空を飛んだ








「紫様!大変です!起きて下さい!」

八雲紫の式、八雲藍は必死に紫を起こす

「何〜?今寝るのに忙しいんだけど?」

いい加減煩いのでようやく身体を起こす紫

「非常事態です…」

そして藍は手早く紫に説明する
数ヶ月前に何者かが無縁塚に現れた事
何者かが現れて野良妖怪が結構減った事
昨日閻魔と死神が死んだ事
今日突然巨人が現れた事
その巨人を気にして動いている者が数名居る事
そして人妖問わず死者が出ている事を話した

「………」

紫はそれを聞いて嫌そうな…そして悩んだ表情になる
特に強くも無い妖怪が死んでも問題視しなかったのだが
今回は映姫と幽香ですら死んでいる さらに人里を守護していた慧音も死んでいる
普通じゃないのは明らかだった

「…霊夢は?」

紫は非常に小さな声で…どこか祈るような声で質問した

「霊夢はまだ無事です 結界も異常はありません」

「何の異常も無かったの?」

「はい、何の異常もありませんでした」

「結界に異常が無いのにその何者かが現れたって事?」

「………そうですね どうやって入って来たかは一切不明です」

「…わかった…その侵入者にお仕置きしないといけないわね」

「では早速…」

「その前に幽々子の所に行きましょう 協力してもらうわ」

「解りました」







「というわけで協力してくれるわよね?幽々子」

白玉楼へ急遽移動し幽々子に協力を煽る紫

「とは言ってもどう協力して欲しいのかしら?」

幽々子は自分がする事なんて無いと言わんばかりに問いかける

「勿論貴女の能力込みで侵入者の駆除を手伝って欲しいのよ」

紫は解ってるくせにと言わんばかりの表情で質問に答える

「物騒ねぇ…弾幕ごっこはどうしたのよ?アレで解決できないの?」

「そうしたいのは山々なんだけど既に死者が出てるからね」
「あの口煩い閻魔様もやられてるんだから念入りに…ね?」

「ふ〜んあの閻魔様が…もう説教されなくなって良かったわね」

「そうだけどそれは相手もそれ程の実力者って事の裏付けよ」

「わかったわ…協力してあげる…この件が終わったら何か見返り頂戴よ?」

「考えておくわ」

「それで…どうするの?」

「もう少し様子を見ましょう 相手を分析してより確実にやる」
「だから様子見お願いね?藍」

「え?あ…はい!解りました!」

「クスクス…じゃあ紫はしばらく此処に泊まるのね?」

「えぇ…そうさせてもらうわ」

「では行って来ますね紫様」

「妖夢ー お茶菓子用意してー」

「解りました幽々子様」

紫と幽々子は個室へと進み妖夢が命令通りお茶菓子を運ぶ
それを見届けた後藍は巨人の下へと向かった









「ん…むぅ?」

どうも魔物達が騒がしい 予定より早く目覚めてしまった

「…何?どうしたのアンタ達」

『敵を始末した…こいつ等だ』

魔物達に問いかけると敵を始末したと言い光を吐いて地面を照らす
私からよく見える位置に映像を出してくれた

「文と…確か椛……そして早苗…か…」

映像を見る限り天狗達の最初の様子を見れば興味本位で来たようだ
多分…早苗の方も同じだろう 早苗は最初から怯えてる様子しか見れなかったが
怖いもの見たさで来る程彼女は暇じゃない 大方調べるよう頼まれたんだろう
あぁ…幻想郷の連中は好奇心で動く奴が多いんだった…非常に目立つ巨人を出したのは迂闊だったか…

『殺してはまずかったか?』

「あぁ…うん…そうだけど…殺すなとは命令してなかったしね…あぁ…しまった…」

天狗を二人も殺せば山の天狗達は黙っていないだろう
この幻想郷が私の良く知る幻想郷と殆ど同じならば山の天狗達は仲間意識がかなり強い筈だ
そして東風谷早苗も殺したとなれば守矢神社の二柱が何もしてこないわけが無い

もう…山とは完全に敵対してしまったか…

「………」

『どうする?我が主』

一体の空龍が降りてきて問いかける

「………もはや妖怪の山は敵ね…」

『では滅ぼすか?』

「……そう、ね…山を一気に滅ぼし…」
「その力を脅威として見せつけて好奇心で動く奴が来ないようにしましょう」

人里と妖怪の山はココからだと方角が全然違う
師匠が巻き添えになる事は無いだろう
山を消せば…誰もが私の魔物達を脅威として見る
そうなれば紫も動くだろう……上等…紫には怨みがある…ついでに…消してやる…クク…

「よし…崩炉!覇斬! 直ちに妖怪の山へ向かい 山を塵一つ残さず消し飛ばせ!」

『了解…した…』

命令を出すとそれまで動かなかった戦車型魔物と巨人型魔物が動き出し
妖怪の山へと向かって行った

(これで山は消え…妖精や小妖怪等の雑魚は近寄らなくなる…)
(そして紫と霊夢は私のような災厄を野放しにしないよう異変解決に来る…魔理沙も来るかな?)
(紫を除いてできるだけ殺すのは控えたいが…もう…手遅れかもね…)
(力を見せ付ければ地底の鬼共も私に興味を抱く恐れがあるが…その時はその時だな…)

崩炉と覇斬を見送りつつ今後を少し考える

「やはりこうなったのはいきなり仕掛けた閻魔の所為ね…」
「奴が大人しく話を聞いてくれれば…やりたくもない殺戮をやらなくて済んだのに…」

もう今となっては遅いか___二人を殺した事を少し後悔しつつ崩炉と覇斬の帰りを待った








「あーっ!お姉様!アレがどこかに行っちゃうよ!?」

折角再思の道まで来たというのに巨人が何処かへ向かって移動を開始した

「う〜ん…折角ココまで来たのに何でまた…」
(向かう先はどうやら妖怪の山らしいけど…って妖怪の山!?)

レミリアは焦っていた
紅魔館は霧の湖の畔にある
その霧の湖は妖怪の山の麓にあるのだ

「お嬢様…」

焦りを見せたレミリアを咲夜が心配する

「えぇ…最悪…紅魔館が消えるかも」

未来の運命を少し先読みしてみたら何と山が滅んでる運命が見えた
あの巨人は山に攻撃するつもりだ 館が消される前に止めなければ!

「フラン!急ぐわよ!あの巨人を止める為に!」

「えっ?うん!わかった」

三人は出来るだけ急いで巨人を追いかけた








できるだけ早く飛行し距離を詰める
巨人の他にもう一体大きな奴が居るのを確認した

(あれも倒さないとダメね…)
「フラン!」

攻撃の射程距離まで詰めてフランに合図を送る

「わかってるよ!お姉様」

フランの能力:ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を行使して巨人ともう一体の不気味な戦車が砕け散った

「やった…!?」

「いや…まだよ咲夜…まだ私には山が消え去る運命が見えてる…」

『グギァァアアアアアア!!!』

「っ!?」

先程砕いた巨人と戦車が叫びを上げて再生し始めた
あっという間に元に戻り 巨人が何処からとも無く大剣を取り出してレミリア達に攻撃を仕掛ける

「うわっ!」

全員何とか避ける 巨人の攻撃はかなり速く よく注意しないと避けるのが難しい
巨人を注視していると急に腕や脚の感覚が消えた気がした

「お嬢様ぁ!!?」

「…え?……ぐぅぅっ!?」

気づけば身体の半分を消されている
その事にやっと気づいて激痛が走り身体は再生を始める

「な…何が起きたの…?」

「気をつけてくださいお嬢様 注意するのは巨人だけでなくもう一体の方もです」

「あの戦車みたいなやつがお姉様をレーザーで貫いたんだよっ!」

説明をしつつフランが再度能力で巨人と戦車を砕く…が今度は少ししか破壊されなかった
破壊された部位が地面に落ちる前に再生し始めすぐに元に戻る

「な!?」

「妹様!危ない!」

思ったより能力が効かなくて怯んでる隙に戦車からレーザーが放たれる
咲夜は能力を使って何とかフランを強制的に回避させる
しかし避けたにも関わらず大きく吹き飛ばされ地面に叩き付けられた
見た目以上に大きく避けないと衝撃波か何かを食らうようだ…

「だ…大丈夫ですか?妹様…」

「あ…うん…ありがと…咲夜」

何とか起き上がり互いの無事を確認する

「ほら…咲夜も早く立って…お姉様一人じゃ荷が重いよ」

すぐさま立ち上がり倒れた咲夜を立たせようと手を差し伸べる

「そうですね…申し訳ありませ……」
グシャッ
咲夜の手を握った瞬間フランの目の前に大剣が突き刺さった

「………え?」

ぐっしょりと返り血で濡れてフランは先程咲夜の手を握った自分の手を見る…
そこにはしっかりと自分の手を握った咲夜の手だけが残っていた





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あとがき

第十七話終了 どうでしたか?

今回は難産でした 複数のキャラを動かすのって非常に難しい
幻想郷に来たのは早すぎたなぁ まぁ練習にはなるでしょうw

さて…次々と死にまくってますね…ごめんね
でも繰り返し言うけどこの小説では死者がバンバン出ます だって主人公ですら死ぬ小説ですしw
この世界では禍たんはどういう結末を迎えるのでしょうか?私にもわからん

巨人型魔物:覇斬と戦車型魔物:崩炉は時間経過の強化により再生能力が付きました
強い敵が回復するのってホントやってられないですよねw

関係ないけど13話と15話少し修正しました
13話はハウビェシームへ墜落するまでのシーンをカットしちゃってたからねぇ 追記してあるよ

それじゃ何時まで続くか…完結できるかどうかは知りませんが 次話あとがきで会いましょう


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