東方輪廻殺
第十九話 熾烈

「私はそろそろ行くわね」

紫が幽々子に話す

「あら?もっとゆっくりして良いのよ?」

幽々子は紫がこうもすぐ帰るのが意外そうに言う

「流石にもうそんな余裕は無いわ…あの子の下へ行かないとね」

「あの子?」

「霊夢よ…霊夢」

「あぁ…そうね…頑張って」

「えぇ…貴女もね…」

そうして紫は微笑んでスキマへと消えた









「う〜ん…困りましたね」

幽玄はほとほと困っていた

「折角入手した食糧を吹き飛ばされてしまうとは…霊禍になんと説明すれば…」

「うぐ…て、てめぇ…」

「私語を許した覚えはありません」

「ぐあぁぁっ!!」

妹紅は手を踏まれ苦痛の声を上げる

「貴女の蘇生がこんなに迷惑なものだとは流石に予想外でしたよ」
「食糧を失うくらいだったら月人の方を残した方が良かったかもしれませんね」
「まぁ失った物は仕方ありません やるべき事が後回しになっただけですから」
「今は…今しか出来ない事を優先すべきですね…」
「それをやる為には元人間の貴女の方がやりやすいというわけでしてね」
「わかりましたか?理解できたのならゆっくりと立ちなさい」

「な…にが……目的だ?」

「喋って良いとは言ってません」

「うぐぅっ!」

幽玄が妹紅を蹴る

「目的ですか…今は冥界へ行く事です 私は高所から降りる事はできても飛ぶことはできませんからね」
「貴女には船になってもらいます 私を冥界へ運ぶ為にです」
「冥界へ行き危険人物である西行寺幽々子を始末するのが今の目的です」
「わかったのなら立ちなさい」

「………くっ」

妹紅は渋々命令に従い立つ
それを確認した幽玄は妹紅の額に手を当て氣を狂わせた

「ぅ……あ……っ」

「さ…行きますよ」

幽玄は妹紅に乗り冥界へと向かう

二つの死体はそれを静かに見送った







「………」

遠くで皆が戦っている
あの恐ろしい巨人達と…
あの恐ろしい魔物達と…

神二柱は何故あそこまで戦える?
魔理沙達もだ…何故弱いのにあそこまで戦える?

死神と閻魔をも屠った相手なのに…
天狗や吸血鬼だって屠った相手なのに…

「くっ…私は…」

「戦いたくないのかしら?霊夢」

「っ!?…紫!!?」

突如スキマから紫が私の前に現れる

「死ぬのが怖い?」

現れて早々真剣な表情で紫は私に問いかける

「あ………あ?」

ガクガクと身体が震える
今までの紫と違う…殺気を込められて睨まれているからだ

___殺される___

そう思えて怖くて仕方が無かった

「…大丈夫よ 貴女ならこの異変だって解決できる」

フッと殺気が消えて紫が微笑んで私に話しかける

「……で…でも…」

「でも……何かしら?」

「私じゃ…巨人は倒せないよ…」

「何を言ってるのかしら?貴女が倒すのは巨人じゃ無いわよ?」

「え…?」

「貴女が倒すのは貴女にそっくりなあの人間よ あいつが元凶だからあいつを倒せば良い」
「あいつは人間だから…巨人よりかは遥かに倒しやすいと思ってるわ」
「私がついてるから…怖がらないで?…霊夢」

「そっか………そう……そうだよね……」

私は段々と力が湧いてきた
そうだ 何も無理して巨人を倒す必要は無い
むしろ巨人は神二柱を相手に動けてない 奴に近づく絶好のチャンスじゃないか?

「協力…してくれる?紫」

目に力強い光を宿し問いかける

「えぇ…勿論よ」

私には紫もついている もう完全に震えは止まっていた

「そう…なら…行くわよ 異変を起こしたあの…私をぶっ倒す!」

私は紫と共に無縁塚へと向かう
途中その近くに居るであろう魔理沙達にも言っておくか
真に倒すべきは巨人にあらず…と






「到着ですね…貴女はもう用済みです お疲れ様でした」

「ぅあぁぁあっ!!」

冥界の門の前に幽玄は降り立ち一人になる

「さて…出掛けていなければ良いんですが…」

白玉楼へ入る 庭師の奇襲を避けて反撃する
しかし幽玄の攻撃はもう一刀の剣によって防がれた

「…む?」

「ぐっ……解ってたのですか…」

吹き飛ばされた妖夢が若干舌打ちして向き合う

「この私に奇襲は効きませんよ」
「ふむ……二刀流…ですか…久しぶりに見ました」

「何の用で訪れたかはわかりませんが…お帰り頂きたい」

「やるべき事があるのでそれが済んだらすぐ帰りますよ」

幽玄が淡々と言う

「………その用件とは?」

「西行寺幽々子の始末です」

「…っ!?……斬る!」

用件を聞いた妖夢は即座に幽玄を排除しようと突っ込む
しかし

「ぐぁっ!?」

「…どうしても邪魔するのなら貴女にも消えてもらいましょうか」

幽玄からの反撃を貰って妖夢は思いっきり吹き飛ぶ

(今どうやって攻撃されたんだ!?)
「消えるのは貴方です 幽々子様には触れさせません!」

「残念ですが貴女はもう終わりです」

「なっ!?」

妖夢はかなり驚愕した
つい先程まで幽玄をずっとずっと注視してたのにいつの間にか背後を取られている

(距離を取らなければ!)

そう思った途端妖夢に手刀が刺さり 爆ぜて消えた





妖夢が持っていた二刀の剣が音を立てて落ちる

「これは…ふむ……まぁ最悪飛び道具として使えますね…少し借りるとしましょう」

幽玄は刀を拾い屋敷の方をじっと見つめる

「……………ふん!」

しばらくじっと見つめていると幽玄はやや振りかぶって長い方の刀を投げた
高速で回転しながら楼観剣が白玉楼の一部に向かって飛んでゆく
剣は壁をすり抜けるように飛んでいき当たった部分から上の部分が
まるでアニメかゲームのように簡単に切り落とされる

不自然に切り取られた屋敷の一部屋から幽々子が現れた

「…全く…死ぬかと思ったわ」

「亡霊は既に死んでる存在だと資料で見ましたが?」

幽々子の姿を確認すると同時に短い方の刀を投げた
今度は回転ではなく矢のように真直ぐと幽々子を狙って白楼剣が異常な速度で飛んでいく

「うわっ!……あ…危ないわねぇ…」

注視していたおかげか何とか避けることが出来た
白楼剣はすぐ後ろの壁に刺さるどころか貫通して視認できないところまで飛んでいった
それを見て幽々子は冷や汗が出る

「………剣を投げて使うのはどうかと思うわよ?」

「剣術は心得ていますがやはり私は素手の方が戦いやすいので」

「それにどれだけの力で投げればこんな真似ができるのよ…」

幽々子は無残に切れた屋敷やすぐ後ろの白楼剣が貫通した穴を見て呆れる

「屋敷を切る場合はある程度長くさらに木材より硬くなければダメですが」
「貫通ならばそれ以外の物でも十分可能です」

「そういう事を聞いてるんじゃなくってね…」
「ま、良いわ…貴方は何者で…そして何故私を狙うのかしら?」

幽々子は幽玄を睨み

「私の名は幽玄…人間です」
「資料で貴女の能力は非常に危険で脅威と判断しました なので始末しに来ました」
「言うまでも無く私も覚悟してきているので貴女も覚悟して下さいね」

「あら…怖いわねぇ…」

幽々子は早速幽玄を殺そうと能力を用いる
幽々子の能力は死を操る程度の能力だ 干渉に成功すれば即死できる
しかし突如幽玄は姿を消してしまった

「あら?」

「こちらです…危ないですね」

声を掛けられた方を見ると屋敷の屋根に立っていた いつの間にあそこまで移動したのだろうか

「速いのね」

再度能力を用いて殺そうとする
だがまたもや幽玄は幽々子の視界から消えた

「ぐっ!?」

幽々子が後ろから吹き飛ばされる

「私は貴女が霊体であっても攻撃できます…が…ふむ……」

「痛いわねぇ…女性には優しくしなきゃダメよ?」

「貴女は…やはり普通では無いようですね…通常の霊なら先程の一撃で消滅するのですが…」

幽玄が面倒そうな目で幽々子を見る

(不意打ちを受けないよう死を纏った方が良いかもね…)
「今度は私からもいくわよ…」

死を纏い自身の防御を固めた上で再度幽玄を死に誘う
だが能力で干渉される前にまたも幽玄は幽々子の視界から消えた

「…また…!…今度は何処に…ぃっ!?」

突如目の前に幽玄が現れる まさか目の前の真正面に出てくるとは思わなかったので
幽々子は大きな隙を晒してしまった
力を込めた幽玄の一撃が幽々子の腹に命中する

「あぁぁっッ!!…ゴホッ!おえぇぇ…」

幽々子は下半身が消し飛びその切断面と口から白い何かが次々と吐き出される

「ハーッ…!ゲボ…ごほっ!」

苦しみにもがきつつ幽玄を見ると彼は倒れていた
纏った死の能力に中てられ攻撃と同時に死んだのだろう

「ハァーッ…!ハァーッ…!…や、やっ…た…?」

魂を操作して失った下半身を再生する
若干薄くなりさらに身体もやや小さくなったが先程の状態よりはずっとマシになった

「はぁっ…ハッ……死を纏って正解だったわね…」

幽玄の遺体に近づき死んでることを確かに確認する

「はぁ……ふぅ……紫に大きな見返りを貰わなくちゃね…」

あっという間に屋敷は無残に壊れ
もはや従者とも言える妖夢が消え
自分は魂を削り取られ消えかけた

休もうと屋敷へ向かう その時背後から手刀が突き刺さる

「…え?」

「…死を体験したのは初めてです やはり貴女は私が見込んだ通り危険な能力者でした」

「う…嘘…!?」

振り向けば死んだ筈の幽玄が居て自分を突き刺していた

(ありえない…!確かにこいつは…死んでいた!間違いなく死んでいた筈なのに)
「な…何で!?…あぁっ!」

刺された部分から魂が血の代わりに放出され消えてゆく

「私は…長い修行を経てあらゆる流れを制御できる術を取得しました…」

手がさらに奥へと突き刺さる

(ぐぅぅっ…!能力が…使えない!?しかも動けない…!)
「ああぁっ!…はっ…うあっぁ…!」

「氣の流れ…力の流れ…時の流れ…魂の流れ…あらゆるモノの流れを感じ取りそれに干渉できる…」
「私はある呪いにより不老不死ですが…もう私は不死になるのに能力や薬等は要らないのですよ…」
「この境地に辿り着けたのは呪いのお陰ですけどね…」

幽玄の手が遂に幽々子の身体を貫通する

「あァぁアあぁぁッっアぁァっ……!!!」

幽々子がどんどん薄くなっていく

「死とは…有から無へと流れる魂の流れ…それに逆らえば先程の私のように蘇生する事は可能です」

「あナ…た…モはや……バけモノ……よっ!」

「私は人間ですよ それにバケモノ呼ばわりはもう慣れてます」

「死な…ナい……人間なんて…イナイ…わ…!…あ…なタは…もう…ニンげん……では……な」

「さようなら…西行寺幽々子 貴女が消える事により脅威は殆ど無くなりました」

幽玄は突き刺さった手を半回転させると幽々子の身体はその腕から散るように弾けて消えた






パチパチパチパチ
白玉楼に拍手が鳴り響く
幽玄が音の鳴る方を向くと影があった

「凄いね…能力を持たない人間なのにあの西行寺幽々子を始末できるなんて…素晴らしいよ」
「流石…お兄ちゃんが見込んで連れてきた人だ」

「貴女は…確か…」

「そう…焔 牢姫だよ ちょっと予定が出来てね」
「君には一足先にこの世界から退場してもらおうと思うんだ」

「私を殺すと?」

「そんな事は言って無い まだ君は霊禍にとって必要な人物だ」
「それにお兄ちゃんがわざわざ呼んだ君を殺すような真似はしないよ」

「…では退場とは?」

「うん…私と共に人を探すのを手伝って欲しいんだ」

「何の為に?」

「霊禍の為にね 君のお陰で体術はかなりマシなレベルまで鍛えられた」
「今度は術の方を鍛える為にその術を教授する人を探そうと思ってるんだよ」

「それは必要なのですか?」

「勿論さ 体術だけでは倒せない相手が居るからね それに襲われたら堪ったものじゃない」

「………何故そこまで?」

「霊禍は私の初めての友人だから…それが理由じゃダメかな?」
「それに…霊禍には協力して欲しい事があるからね その為にも強くなってくれないと」

「彼女を利用すると?」

「悪く言えばそういう事になる」

「…その霊禍に協力して欲しい事とは?」

「それは霊禍が協力してくれる事が確定した時に話すよ まだ時期尚早だ」

「………わかりました…では私を連れて行く前に霊禍に伝えなければなりませんね」

「それは私がやろう 君は今すぐ術師を探すんだ 君の実力を見込んでのお願いだよ」

「………信用して大丈夫なんでしょうね?」

「それは保証できないが信じてくれると嬉しい」

「………わかりました 連れて行きなさい」

「うん…じゃあまずはこの世界を見てきて欲しい なるべく強く信用できそうな人を探してね」

そうして牢姫はスキマを開き 幽玄は特に抵抗する事無く別の世界へと飛んでいった

「…よし…無事に転送完了……さて…霊禍の所へ行くか」

牢姫は幽玄を見送るとすぐにその場から消えた







「ん…?」

霊禍が帰ってきた襲牙を確認する
だが師である幽玄は何処にも居ない…

「どうしたの?師匠は?」

『辿っていたが突如気配が完全に消えた この世界に幽玄は居ない』

襲牙が答える

「何!?ど、どういう事!?死んだ…の?」

『そこまでは解らぬ…』

「幽玄は死んでないよ霊禍」

「っ!?」

『!?』

気配も何も無い所から声が聞こえ霊禍と魔物達は警戒する
霊禍と襲牙の間に牢姫が最初から居たかのように現れた

「…魔物達の警戒を解いてくれ霊禍…話がしたい」

「牢姫?…わ、わかった…お前達警戒する必要は無い 私の友達だ」

『………』

命令と共に魔物達は攻撃態勢を解除する

「それで…話って何?」

「まず幽玄の行方だが…私が別の世界へ送った」

「…!な、何でよ!」

「私の協力をしてもらって人探しをしている 君の為にね」

「私の為に?」

「まぁその件は目的となる人物が見つかってからにしよう あ…お腹空いてるでしょ?はいご飯」

「あ…ありがと…」

霊禍は大きなおにぎりを受け取り食べる

「とにかく…私に協力してもうこの世界に彼は居ない それをまず伝えに来た」

「………」(モグモグ)

「んで話だけど……霊禍…君目的を忘れてるんじゃ無いよね?」

牢姫が声を落として私に問う

「目的…?」

「今の君の目的は何かな?」

「あいつ等を倒して平穏を得る事よ」

今食べているおにぎりを飲み込み 話す

「どうしてあいつ等を倒す必要があるんだい?」

牢姫がもう一つおにぎりを渡してくる

「あいつ等は敵よ…あいつ等…特に紫が居る限り私は安心して生きられない」
「既に何人か殺しちゃってるからね…もう避けられないわ」

おにぎりを受け取り食べる

「そう…」

牢姫は明らかにガッカリしたような反応を見せる

「それで…何なのよ?」

「私はもう行くよ 幽玄にだけ任せられないからね」

「ちょっと!話ってのはもう…良いの?」

「うん…話ってのはこれだけ それじゃ私は行くね 頑張って」
「最後に…君は皆に認められる為に生きていた筈だ…なるべく殺しはしない方がこうならずに済むよ」

「…!」

「それじゃあね…また会おう…霊禍…」

牢姫は音も無くスッと消えた

(皆に…認められる為…)

私は少し考え…おにぎりを食べつくした









「な…何だ!?」

巨人と戦車が急に黒く染まる

「諏訪子!?」

「私にもわかんないよ!突然…」

黒く染まった魔物達が諏訪子の術から逃れ這い上がる
そして二柱の目の前に突如大きな黒い球体が現れる

「友人のペットを苛めるなんて酷い事する神様じゃないか」

「な!?」

二柱が驚いてる間に巨人と戦車は山へと向かって進み始めた

「! 諏訪子!奴等が山へ向かうぞ」

「行かせない!」

「それはこっちのセリフ〜 あの2体を止めたかったら私を倒してからにしてね〜」

神奈子と諏訪子の進行上に影の騎士が現れる
黒い球体は段々と小さくなっていき人の形になっていった

「…お前は何者だ?」

「私は焔 牢姫 君達の敵だよ」

「邪魔するなっ!」

神奈子が雷を放つ その隙に諏訪子が巨人達の下へ向かう
だが影の騎士と牢姫には雷は効かず 諏訪子の前には影の騎士が立ちはだかる

「ちっ…邪魔しないでよ」

「嫌だね 君達は此処で…死んでもらうよ」

「何ぃ?」

神奈子が牢姫を睨む そして影の騎士を巻き込みつつビームを放った
諏訪子は鉄の輪で影達を攻撃する
だが二柱の攻撃は全く効果が無かった

「神奈子…注意して…こいつ等攻撃が効かない…物理攻撃も術も…私の祟りすら効かない」

「ハハハハ どんな気持ち?」

「くそ!」

二柱は明らかに苛立ち 反対に牢姫はカラカラと笑う
影を無視して進もうとするが

「む…!通っちゃダメだってば」

進行先に影の壁を出されすぐさま邪魔される
攻撃してもやはり効果が無い

「ぬぅ〜…何で邪魔するのよ!」

「え?敵だからに決まってるじゃな〜い そんな事もわからないなんてホント愚かだねオ・チ・ビ・ちゃん」

愚かの部分をやけに強調して牢姫があざ笑う

「むきぃ〜!!バカにしやがって!」

「諏訪子落ち着け 今は何としても巨人共を止めるのが先だ」

巨人達は最初から妖怪の山へ向かっていた 嫌な予感しかしない
あの吸血鬼も止めようとしていた程だ巨人達は倒さなければならない

「お?そっちの年増はやけに冷静だね?」

(ビキッ と、年増?)
「………諏訪子」

「う、うん…何?神奈子?」

「こいつぶっ殺すぞ」

「うん」

「死ねぇぇえええええ!!!!」

二柱は力を合わせて影達に巨大なビームをぶっ放した
それを見て牢姫は不適に笑う

「クク………馬鹿め…」

巨大なビームは闇に飲み込まれる
そして二柱の横の方に黒い穴が出現しそこから先程の巨大なビームが発射された

「な!?」

二柱はすぐさま攻撃を中断し何とか避ける

「よく避けたね…でも…もう終わりだよ」

牢姫がそう言うと妖怪の山から大きな轟音が鳴り響いた

「あ…あぁ!!」

諏訪子が信じられない目で山を見る

「そんな…畜生…!」

神奈子は悔しそうな目で睨むように山を見る


妖怪の山が巨人達の攻撃によって跡形も無く消滅した


「残念だったね…でも残念な出来事はこれだけじゃ無いよ…クククク…」

牢姫はそう言い残しスッと消えた

それと同時に霊夢と紫が現れる


「霊夢…紫…」

二柱は霊夢と紫の姿を確認し呟く
二人はある程度近づくと突然二柱に攻撃を仕掛けた

「な!?何をする!?」

不意打ちだったので慌てたが何とか防いだ

「ちっ…紫!」

霊夢が紫に合図を送り 紫は無言で頷く
引き続き霊夢が二柱に攻撃を仕掛ける

「どういう事だ!何故我々を攻撃する!?」

神奈子が二人に叫び問う

「…はぁ…神も堕ちたものね…」

紫がさも幻滅するかのような目で見る

「許せないわ…!私達を騙してたなんてね!」

対する霊夢は怒り心頭だ

「!?」

思いもよらぬ答えが返ってきて二柱は混乱する

(何故だ?我々が何をした?騙すとは?誰が何時誰を騙したというんだ!?)
「落ち着け霊夢!我々は敵じゃない!」

しかし霊夢はまたも思いがけない返答をする

「何!?人里にまで手を出したっていうの!?許せないわ…本当に堕ちたのね…!」

「もう貴女達を生かす理由は無いわ…私が責任を持って葬る!」

紫も怒りを顕にしている

「何の事だ!?」

<楽しんでるかい?>

突如頭の中に声が響く
諏訪子を見れば諏訪子も驚いたような顔でこちらを見ている
どうやら諏訪子にもこの頭に響く声が聞こえているようだ

<混乱している愚かな君達に種明かしをしよう…今霊夢と紫には私の幻を見てもらっている>
<二人には君達がこの異変に便乗して殺戮を行った堕神として見えているよ>
<君達を引き止めた時に丁度霊夢と紫を確認してね…幻術で挑発しまくったんだ>
<決め手は君達が力を合わせて放った攻撃があるだろ?あれは実は霊夢と紫に向けて放っていたものさ>
<本気で敵対している事を彼女達に理解させ君達は目出度く討伐対象だ>

「馬鹿な!?そ、そんな事!」

「もう黙りなさい…アンタのような屑の声なんて聞きたくも無いわ」

霊夢はさらに怒りが篭った目で睨みつける

「その下卑た笑いも不愉快よ」

紫も珍しくキレている その証拠に怒りで歪んだ顔を隠そうともしない

<君達が今どれだけ彼女達を説得しようとしても無駄だよ>
<彼女達には君達が徹底的に悪役に見えるよう錯覚している>
<そうそう…ついでだけど君たちには八雲紫の式である八雲藍を殺した濡れ衣も着てもらっている>
<式が殺され…人里でも殺戮を行い…さらに早苗までも騙した悪党として…君達は怨まれて死ぬんだ>

「貴様…!!」

<…さらに良い事を教えてあげよう…私のこの声が聞こえてるって事はね…>
<私が君達に干渉して君達のあらゆる力を弱らせてる証拠なのさ…君達の力はもはや中妖怪以下…>
<さらに人里であること無いこと私が言いふらしたから君達を信仰する者はもう誰も居ない>
<神社も壊れたしね…君達には何も残っていないんだよ…>
<幻想郷史上最低最悪の神として名が残る事を誇りに思い……死ぬがいい…>

「くそがぁぁぁあああ!!!」

力を完全に失った神奈子と諏訪子は霊夢達によってあっけなく滅ぼされた





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あとがき

第十九話終了 どうでしたか?

幽玄さんはここらでフェードアウト 後々の話の為にストックしておきますw
そろそろ第四世界も終盤です もうこの異変の終わり方は決まってます
二柱も消えちゃいましたし 駆け足で終わらせますよ〜

幽玄さんが完璧人間止めてますね〜 自力で蘇生すんなよw
一応言っておきますが幽玄さんは『何の特殊能力も持たない人間』です
でもだからと言ってここを読んでるあなた等の人間が幽玄さんのようになれるわけじゃありません
彼はもう人間としての限界を色んな意味で超越してるのです
人間だけど人間じゃない…そんな感じの人間です パネェっすねw

それじゃ何時まで続くか…完結できるかどうかは知りませんが 次話あとがきで会いましょう


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