東方輪廻殺
第二十話 日記

脚を潰された5人が落ちる
それぞれ全員がロクに着地できず情けなく崩れ落ちた

「さぁもう逃げられないぜ?」

グウィンがゆっくりと5人に近づく

「くそぉ…食らえ!」

魔理沙は痛む脚を抑えつつビームを放つ
それに便乗してアリス、パチュリー、小悪魔も弾幕を放つ
美鈴は治癒功で皆の傷を癒す

しかしそれぞれの攻撃は次々と収縮していきグウィンに届く前に消えてしまった
グチャッ
「ぐあぁっ!」

「美鈴!」

美鈴が突如叫ぶ 見れば両腕を潰されていた
四肢を潰されてもはや何もできなくなってしまう
美鈴に向かってグウィンが歩き出す

「く…来る…な…!」

「あばよ」
バキバキバキッ グチャッ グシャッ
次の瞬間美鈴が音を鳴らして潰れだす
血をその周囲に撒き散らしてあっという間に小さくなった

グウィンが他の4人の方へと振り向く

「さぁ…次は誰が肉団子になりたい?」

「ひっ…!」

「そうか…お前か…」

今度は軽く悲鳴を上げた小悪魔のところへ向かう

「させ…ない!」

アリスが弾幕を放つ 弾幕は収縮されて消えた
パチュリーが魔法で攻撃する 魔法も収縮されて消えた
魔理沙がレーザーを放つ レーザーは拡散してあらぬ方向へと飛んでいった
グチャッ ブチブチッ バキッバキッ
「あ…っ…ガ……ァァアッ……ぁ」

小悪魔が美鈴と同じように潰れ同様に小さくなった

グウィンが3人の方を見る

「ん?何だ?その目は」

グウィンは一人だけ希望を捨ててない目を持つ人間…魔理沙に注目した

「まだだ…まだ私等は…負けちゃいねぇ!」

そして再度グウィンに向かってビームが放たれる

「………」

グウィンはビームに集中し先程同様に収縮させる ビームは収縮されて消えた
だが気づくと弾幕やレーザーがグウィンに迫る

攻撃はグウィンに命中した

「やったぜ!」

ビームを目隠しにして弾幕やレーザーを当てる
即席の策だが上手く決まった これであいつをやっつけた …そう思っていた

「………それで?」

グウィンは特に何の傷も汚れもなくそこに立っていた

「な?無傷?嘘だろ…」

「これで理解したか?テメェ等はもう逃げられガフッ!?」

突如グウィンがぶっ飛ばされる
そして3人の前に霊夢と紫が下りてきた

「霊夢!」

「危なかったわね……遅れてごめん」

「いや…助かったわ」

「でも山は間に合わなかったわ…」

「山?」

3人は妖怪の山の方を見る しかしそこには既に山は無く巨人達も姿を消していた

「な…?何が…どうなったんだ?」

「山は巨人達によって消されたわ…止めたかったけど神奈子と諏訪子に邪魔されてね…」

紫の返答にアリスは疑問を浮かべた

「どういう事?」

「そのままの意味よ…私等はあいつ等に邪魔された…お陰でもう山は無い」

今度は霊夢が代わりに答える

「どういう事だ!あいつ等はむしろ巨人達を!」

「ストップ…おしゃべりは此処まで…さっきの奴が戻ってきたわ」

紫が魔理沙を制止し全員にグウィンが戻ってきた事を伝える

「不意打ちたぁ上等じゃねぇか…え?」

グウィンは明らかにキレていた 紫は境界を操作し自分達の位置を少しずらす
先ほどまで居た空間に少し引っ張られる感触がした…グウィンの攻撃を避けれたのだろう

「あ?…テメェ…」

そして紫は何処からか煙幕を放った

「皆…奴の視界に入っちゃダメよ そしてなるべく速く動き回りなさい」
「私が奴の注意を引くからその間に皆は奴を倒して頂戴」

「わかったわ…」

「あぁ…了解だ…いつつ」

「…あいつは硬いわ…魔理沙のビームが直撃しても平気だったもの…どうすれば良いの?」

「急所…あるいは何か弱点があるかもしれないわ…頑張って探しなさい」

「両脚潰れて集中し辛いってのに…きついわね…」

全員飛行しグウィンに攻撃を仕掛ける
この煙幕は特殊な煙のようで向こうからはこちらは見えないが
こちらからは普通に見えるという都合の良い煙幕だった
グウィンが次々と弾幕に当たる……しかしやはり効果が無い…

「野郎…私の能力は潰すだけじゃねぇぜ?」
パンッ
グウィンは自分の周囲の大気を一気に拡散させた 煙幕が晴れる

「な!?」

グウィンが即座に周囲を確認すると無数の紫がグウィンを囲んでいた

「幻術か?だとすればまだ甘いぜ!?」

各方位のやや離れた位置の大気を拡散させ空気の爆発を起こす
その爆発に巻き込まれた紫が消える それと同時にグウィンに激痛が走った

「ぐぁあっ!?な、何だとぉお!?こ、これは…!」

「いくら貴女が頑丈とは言え自分自身の攻撃は流石に効いたでしょう?」

周りを囲った無数の紫が一斉にグウィンに話しかける

「………ハッ!何の術かはしらねぇが…要は反射される前にテメェを殺せばいいんだろ?」
「これなら…どうだ?私のとっておきだぜ?」

グウィンは両手を合わせそこからゆっくりと手を開く
手と手の間に小さな白い球が現れる
段々と白い球は大きくなり握り拳よりやや大きい程度の大きさに留まった

「霊夢!急いで!あの魔力…ヤバイのがくる!」

紫が霊夢を急かす

「無理よ!間に合わない!!」

霊夢が叫ぶように紫に返答する

「これ以上は主のトコまで被害が出るな…これで決まると良いが…食らいなぁ!」

グウィンは白い球を上空へと放り投げた
それと同時にグウィンがあっという間に小さくなりその場から消える

「まずい!全員こっちに!」

紫は全員をスキマの中へ半ば強制的に避難させた
球を中心に大気が爆発する
ドゴォォォォン






「とんでもない攻撃ね…」

5人はスキマの中から幻想郷を見ていた

「あの鳥の爆発よりやべぇな…」

魔理沙が呟く
先程まで居た場所は空龍の爆発で広い荒野と化したが
今ではなんと砂漠化している しかも範囲が荒野の時より広い

「でもあいつは何処に消えたのかしら?自分から消えたような…」

「とりあえず…外に出ましょう」

5人がスキマから出てくる
着地と同時に紫が地面に引きずり込まれた

「なっ!?」

「紫!……くっ…」

紫が砂の中に消えると同時にグウィンが地中から現れる

「小賢しい奴には退場してもらったぜ」

「アンタ…紫をどうしたの!?」

「あぁ?食っちまったよ!私のペットがな!」

突如霊夢は嫌な予感がしたので飛び上がった
今度は魔理沙、アリス、パチュリーが砂の中へと消える

「っ!?」

「よく避けた…が、残るはテメェ一人だ…あぁぁァっ!?」

紫が砂の中から現れグウィンにしがみつく
今度はグウィンが引きずり込まれる

「ちっ!まだ生きていたのか…放せオラァッ!!」

じたばたとグウィンが暴れる

「霊夢…コイツは私が引き受けるわ…後の事…任せたわよ?」

そう言って紫とグウィンはスキマへと消えた
すると砂がどんどん引いていき3人の遺体と1匹の百足のような魔物の死骸が姿を現した

「紫……皆……」

霊夢はかつての友人達の亡骸をしばらく見つめ
そして無縁塚へと向かった







『主…来たぞ』

「ん…?…………霊夢か…霊夢とは話がしたい…お前達は手を出すな」

『…解った』

霊禍は霊夢を視認し魔物達を消した


「よく来たわね…一応聞いておくけど…何の用かしら?」

「アンタを成敗しに来たわ」

「………霊夢…今更かもしれないけど私はこういう殺戮は望んでないのよ」

「ホント今更ね…でも既に何人も死んでるわ 人も…妖怪も…」

「人も…?」

霊禍は少し疑問に思った 死んだ"人間"は早苗と咲夜だけの筈…
霊夢が此処に一人で来たという事はまだ未確認だが魔理沙一行も全滅してる…多くて3人しか死んでない筈だが…

「神二柱がアンタの起こした異変に便乗して人里を襲ったのよ」

「何!?…あいつ等…が?…何時…どうやって…」

「…?知らなかったの?でもこれは確かよ…あいつ等が自白してたもの」

「………そう…まぁ失ってしまったものはどうしようも無いわ」

「そうね…」

「霊夢…貴女は私をどうするつもりなの?……殺すの?」

「えぇ…今更弾幕ごっこなんてやってられないでしょう?」

「そう…また…貴女に殺されるのね…」

「言っておくけど…私は今まで殺人なかしてないわ」

「うん…わかってる…でも私にとっては『また』なんだよ…」

「……貴女は私の友人を沢山殺したわ…博麗としてではなく私個人として貴女を許さない!」

「………」

「何とか言ったらどうなの?あの時みたいに私に啖呵を切ってみせなさいよ」

「何処で…失敗したんだろうなぁ……」

霊禍は空を見上げて呟く

「………?」

「私は貴女が羨ましい…私とまるで正反対」
「貴女は邪気なんか無い普通…いえ…聖なる巫女……素敵ね」
「貴女は私なんかと違ってとっても強くて恐れを知らない……素敵ね」
「だからこそ貴女は誰からも頼られる…これからもずっと……素敵ね」
「だからこそ貴女は災厄を祓い…皆を救う……だから誰からも受け入れられ…愛される……素敵ね」

「………貴女が何と言おうと私は貴女を殺す…それがこの異変のケジメだから」

霊夢は霊禍をさんざん睨んだ後スッと表情が消えた
あらゆる想いを捨て本気でこの異変を決着させるつもりだろう
何の情緒も無く…一切の油断も無く…一片の後悔も無く…私を殺すだろう

「………わかった…殺しなさい…貴女が私を要らないというのならそうなんでしょう」

それが霊夢の覚悟だと見た私も覚悟を決めた
元より牢姫との話で思い直した時から抵抗するつもりは無かったが…

霊禍はどこからか剣を取り出し 霊夢に渡すように投げる そして座って霊夢を見る
霊禍は霊夢の表情を見る……霊夢は無表情だ

「悪しき化け物は駆逐すべきよね?霊夢…」
「遠慮は要らないわ……私は…バケモノだからね……ははは……うぅ…」

霊夢は剣を拾い 霊禍に注意深く歩み寄る
霊禍は霊夢の表情を見る……霊夢は無表情だ

「私は…貴女に約束する……次は…こんな失敗しないと……皆に認められる為に動くわ」
「………そして最後に………」

霊夢は力を込めて剣を振り上げる
霊禍は霊夢の表情を見る……霊夢は無表情だ

「…ごめんね?」

霊夢は剣を振り下ろした
霊禍は霊夢の表情を見る……霊夢は笑っていた









「おっと…」

本棚を整理しているとパタッと古い日記帳が落ちた
私はそれを拾う

「…これか…懐かしいな……結局…何だったんだろうなぁ」

日記の表紙には博麗霊夢とだけ書かれていた
日記を開き読み始める



8月16日
巨人異変が終わった
阿求が死んでるからこの異変の記録は私がやらなければならないと私に言われた
しかし何を書けば良いのか…私に聞いてみるととりあえず異変があった事を記せば良いと言われた
この異変は私にとって大きすぎる異変だった 大事なモノを沢山失った
山が消えたから館と湖も消えた 森も一部が消えた
私がよく知る人達は誰も居なくなった
私を殺した私は神社へ帰った後 失った人達を思い出して泣いた


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8月17日
紫が見つかった
幻想郷を管理する者は私一人になった
私が私に謝る こうなったのは私の所為だと
私は私に関係無い事だと言い私を元気付けた


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8月18日
阿求が転生した 記憶は残ってるのだろうか?
彼女の屋敷にあった記録は全て消えている 誰が消したのだろう?
あいつ等は殺戮だけして里を去った筈なのに…
私に聞いてみたら知らないと言われた そりゃそうか


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8月19日
私は妖怪を殺しに行った 各所の勢力が一気に減ったから雑魚妖怪が調子に乗っているようだ
討伐のお礼を頂く 少し奮発して良い酒を買おう
きっと私も喜んでくれる


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8月20日
私が妖怪を殺しに行った そういえば妖精達が減っている
山が消えたから住処が無くなったのだろうか?
私は今日一日寝ていた


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8月21日
私が記録を転写している 稗田屋敷に保管する為だそうだ よくやる
私が修行したらどうか?と言う もう巨人異変のような事を繰り返さない為にもと
修行は嫌だったがまたあの異変が起きても大丈夫な様に修行する事にした


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8月22日
私は私を殺した
私はまだまだ甘いと評価された もっと経験を積む必要があると言われた
巨人異変前はずっと弾幕ごっこだったからなぁ


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8月23日
私は妖怪を殺しに行った また増えている
数日前殺したばかりなのに抑制力が無いとこんなに増えるのか
面倒だと話したら私がこれも修行になると言ってきた 疲れる修行は嫌いだ 疲れなくても嫌いだけど


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8月24日
私が妖怪を殺しに行った
私は人里の復興の為番をする事になった
子供達が夜遅くまで遊んでいる…もう教師が居ないからなのだろうか?
それにしても今日は何処の店も休みなんてついてない


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8月25日
私は私を殺した
確かに私が殺したのに歩いていたから殺した
まだ死んでいなかったから妖怪が湧いて出るんだ そうに違いない
私は私を地底に捨てた


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8月26日
私は私を殺した
私は腕が上がったと評価された でも自惚れてはいけないと言われた
もっと修行しないとダメだ…
私は妖怪を殺しに行った


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8月27日
地底の妖怪達が全滅した
私に聞くと私はやってないと言っていた
なら私がやったのだろうか?


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8月28日
私は私を殺した
また私が現れた どこから湧いて出ているんだろう?
殺しても殺してもきりが無い


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8月29日
私は私を殺した 今日は16人だ
急に私が増えた…私に聞いてみても異変では無いらしい
なら何故私がこんなに現れるんだろう?あ…また来た


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8月30日
私が私を殺した 今度から私も手伝ってくれるらしい
私も気づいたようで私を殺すペースが早くなった 今日は40人殺した
私はついでに妖怪退治も済ませたが収入は無かった


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8月31日
私は私を殺した
私は期待以上の成果になった 間に合ったと言われた
どうやら近い将来強大な敵が現れるらしい その為に私を修行させたそうだ
後はその敵が倒せるか否かに掛かっている


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8月31日
私は私を殺した
私が私を選ぶ 後はこの私に託すとしよう
狂った私は要らないんだ


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8月31日
私は私を殺した
私が私を選ぶ 私は私に聞いてみたがまだ来ないそうだ
私を38人殺した 人里がやけに静かだ
こんな所まで危険が及んでるから誰も表に出れないんだ
何とかしないと


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8月31日
私は私を殺した
私が私を選ぶ 何時になったら来るのだろう?
私を8人殺した 今年は少なかったな


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8月31日
私は私を殺した
空が割れる 私に聞けばついに来たらしい
私はあらゆる物を人里へ送り 黒い鬼に挑んだ


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8月31日
私は私に起こされる どうやら眠ってたようだ
私が私に私が眠っている間に起きた全ての真実を話してくれた
私は泣いた


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9月1日
私は私に殺してくれと悲願した 私はそれを承諾してくれた
私のこの日記は私が私の幻想郷に送り届けてくれるそうだ
読み返してみれば我ながら意味がわからなくて笑ってしまう
でも追記する事はできない この日記は真実しか映し出さない私の特別製で
後からの書き込みは全て偽りの捏造として扱われるから消えてしまう
もっともっと一杯書けば良かったかな?私が居た事の証明はもうこれだけなんだし…
もう後の事は私に任せよう いつまでも付き合ってくれたこの私に…
最後に………ごめんなさい




「お〜い!」

読み終えると同時に私は誰かに呼ばれる 教え子だろうか?
私は日記を閉じ本棚へと戻した






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あとがき

第二十話終了 どうでしたか?

かなり急展開ですねw
霊夢の日記は〜…まぁ各々自由に想像して下さいw
一応この日記はある真実を映していますが
『私』がゲシュタルト崩壊する程出まくるので混乱するかと思いますw
何故『私』がこんなに出てくるかはある決まり事が出来たからなんですがそれは秘密です
まぁぶっちゃけそんな大したことでは無いのでわからなくても問題ないです

この日記は意味が解ると怖いを目指して作ったけど…
正直意味が解ってもあんま怖くは無いですよね
む〜…難しい…怖さが…そして後味の悪さが足りないっ!

それじゃ何時まで続くか…完結できるかどうかは知りませんが 次話あとがきで会いましょう


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