東方輪廻殺
第二十一話 世界

「はっ…!?」

私は目が覚める 此処は………

「博麗…神社…」

「よく来た…」

「…!」

牢姫の声が聞こえ振り返る
相変わらず真っ黒い影の姿で牢姫がそこに居た

「此処は8番目のお前の場所だ…しかし今は私の場所だ…奪い取れば良い…できるものなら」

「………」

「………」

「牢姫…師匠…幽玄は?」

「…別世界だ…協力してもらってるって話したよね?」

「あ…あぁ……てっきり一緒に居るのかと…」

私は少し落ち込んだ
幽玄とはもっと話がしたかった…もっと一緒に居たかった…

「それよりも霊禍…理由を聞かせてくれないかな?」

「理由?」

何の話だろう?

「そう…何故あんなに簡単に死を受け入れたのかな?」

「………」

あんなに…というのは何の抵抗も無しに霊夢に殺された事だろう
私は生きることを目的としていたから不自然に見えたんだろうね

「あの時点のあの世界の管理者は霊夢だった…」
「その霊夢から要らないと言われればもう私があの世界で生きる価値は…無いわ…」

「それで?」

「それで?………それだけよ」

「ふ〜ん…それで死を受け入れるんだ? バカじゃないの?」

「なっ!?」

「霊禍は最初から否定されてたじゃないか!それを打ち破り皆に認めてもらうんだろう?」
「なら管理者だろうが神だろうが世界そのものだろうが…否定されたからと言って諦めてはいけないよ」

「う…」

「これから先…同様にすぐ諦めてしまうようなら…私はもう君に協力できないよ」

「ま、待って!…諦めない!それにあの幻想郷での末路のような事はしないわ」
「無闇に殺して皆を敵に回すような事もしない!できる限り認められるよう動く!」

「ん…それなら良いんだ…」
「さて…話は変わるが…これからは君自身が別の世界へ行くんだ もうその力は十分にある」

「………私が?」

「あぁ…今までは私が世界を選んでいたけど…これはあくまで君の…物語だ」
「何…そう難しい事じゃない 空間転移の発展形だよ さ、やってごらん」

「ん…急にやってみろと言われても…」

「じゃあ諦めるかい?」

「いや…やってみるわ…」

私は壁を作り出す 紫のスキマのように何かしらの『扉』があれば
空間転移やそれに類する事はできると思ったからだ
私が使役する魔物達は壁から出した方が早く召喚できる
だから私も壁を通した方が転移等がやりやすいと踏んだ

「…いくわよ」

「………」

牢姫はただ黙って私を見守る
私は壁に触れて別の世界へ転移するように曖昧に力を込めた

しかし…何も起こらなかった…

「………牢姫ぃ〜」

私は泣きそうになって影を見る

「やれやれ…まずは空間転移ができるようにならないとダメだね」
「壁を2枚出してその壁が出入り口になるようにして空間同士を繋いでごらん」
「これが出来れば空間転移のコツが何となく掴める筈だ」

「う…うん…やってみる…」

壁を離れた位置にそれぞれ1枚ずつ出す これとこれを繋げれば良いんだよね…
壁にそっと触れて力を込めて手を突き刺してみる 腕は壁に飲み込まれているが消えたような感覚は無い
もう一つの壁を見てみればそこから腕が出てきている 私の意思で動いてる事からアレは私の腕だろう
私は壁にそのまま入ってみた 通り抜けると背後にはもう一つの…先程触れていた壁とは違う壁があった

「………これで良いの?」

「…まぁ最低限はそれで良い……じゃあ今度は壁1枚で同じ事をやってごらん」

「え?…どうやるの?」

「イメージとしては…そうだな…紫のスキマの中と外のような感じだ」
「今居るこの世界を外として見るんだ」
「君の壁を扉として外の世界と中の世界を行き来出来るようにしてごらん」
「これが出来れば…色々とかなり便利だよ」

「外と…中…」

「逆の認識でも良い…この世界が中として外へ出る感じ 外へ出る扉が君の壁だ」

「…何となくわかった…やってみる…」

私は壁を1枚だけ出して先程同様に力を込め腕を入れる
これもまた先程同様腕は飲み込まれているが消えてるような感覚は無い
じゃあ私の腕は一体何処にあるんだろうか?
私は周りを見渡す

「…何を探してるんだい?」

キョロキョロとしていた私を不思議に思ったか牢姫が問いかける

「いや…私の腕はどこかなって…」

「それはその壁の中だろう…君の次元の世界だよ…入ってごらん……あ…ちゃんと出てきてよね?」

「う、うん…わかった…」

私は壁の中へと入っていく





『よく来た…我が主よ…』

「襲牙…此処は…?」

「ここは主の世界だ 主が消去したあらゆる全てはこの世界に収容される」

襲牙の代わりにグウィンが答える

「グウィン……生きてたのね…てっきり紫に道連れされたと思ってたけど」

「何言ってるんだ主…私は既に主に殺されてるよ」

『我々は…主が完全に滅ばぬ限り消滅する事は無い』

空龍が続くように話す

「ここに来た記念に言っておく…主は私達だけじゃなく私達の攻撃とかも出せるんだが…知ってたっけ?」

「攻撃…?どんなの?」

「私達同様に今まで消した攻撃とかだな…」

今度はルクィが答える

『また…我々がこの空間内で出した攻撃も同様に召喚できる…』

崩炉が続くように話す

「暇だから私達此処で戦争してんのよ 魔物達より弱いとか足手纏いになりそうで嫌だからね」

今度はアムが話す

「我々夜魔族や屍狗族のような…所謂魔物達に属さないモノはこの空間内でいくらでも強くなります」

続いて夜魔が話す

「私達が修行してれば…だけどな まぁ主は気にしなくて良い…私達の問題だ」

グウィンが付け加える

「新たに使えるようになった攻撃は私がメモを取りました…こちらです…どうぞ」

屍狗がノートを渡してくる 開けば映像付きで各説明が付いている
今まで使えてた攻撃は…
襲牙の攻撃
・炎
空龍の攻撃
・棘
・毒針
崩炉の攻撃
・レーザー
・砲撃
・ビーム
絶鬼の攻撃
・蒼炎
・光斬撃
四季映姫の攻撃
・通常弾幕

新たに使えるようになった攻撃は…
襲牙:雷撃
空龍:真空波
崩炉:ミサイル
アム:イビルレイ
グウィン:ディパンド・ソドム

「………魔物達の攻撃はまぁそのままだから解るとして…アムとグウィンの技は…何?」

「やっぱ技名はあった方が良いでしょ ね〜?」

「ね〜?」

アムとグウィンはお互いに「ね〜?」と頷きあってる…仲良いな…おい
元々の世界だと戦争しあってたんじゃ…?
てか間接的にアムを殺したのはグウィンとルクィだし…和解したのかな…

「ふ〜ん…わかった…てかこれどうやって使うの?」

『普通にイメージすれば出せると思うぞ?』

覇斬が答える イメージか…早速やってみよう
私は壁を出して襲牙の吐く炎をイメージする
すると当たり前のようにボンっと炎が出てきた 軌道までもがイメージ通りに出てくるとは…

「…なるほど…」

「主〜私の技は使わんのか?」

グウィンが使ってと言わんばかりに話しかける

「え…?でも…これって…」

ノートに付いてる映像を見る限り
グウィンの技は異常に攻撃範囲が広い
使ったら自分も巻き込まれそうだ

「これ使ったら…私自身巻き添え食らいそうだけど?」

「大丈夫…此処に来れたって事は使った後此処に避難するか此処で使ったら外に出れば良い」
「そうすれば被害はこの技を使った世界だけになる な?ちゃんと私の技使えるだろ?」

「む〜…そうなの…?わかった…使う機会があればその時にね」

「え〜?今使ってくれないの?」

「遊びに来たんじゃ無いんだから…」
「えっと…じゃあ私はそろそろ外に出るわ…」

私は屍狗にノートを返す

「あ…屍狗 できれば映像だけじゃなくて攻撃の威力や特殊効果、副作用もあったら記録して頂戴?」

「畏まりました」

「それじゃ…私はもう行くね?」

『ここは主の世界…何時でも此処へ帰って来ると良い…此処には主に敵対するモノは居ない』
「それに私が居るから何時でも治療はできますよ」

襲牙とルクィがそれぞれ答える

「ありがと…じゃ…行ってきます」

皆に見送られて私は私の世界から外へ出た







「…! 遅かったね霊禍…」

「え?…えぇ…ちょっとね…」

「さて…ではいよいよ本番だ…別の世界へ行ってごらん」
「イメージとしては…そうだな…部屋をイメージしてみよう」

「部屋?」

「良いかい?まず世界を一つの部屋として見るんだ…」
「今此処に居る世界を部屋A…君の世界を部屋Bとして考える」
「そして新たな世界へ行く場合は部屋Cへ繋ぐって感じだ…わかるかな?」

「ん〜…言葉ではわかるけど…認識できない世界へ繋ぐってのは…」

「それは君が新たな世界は無いって思っちゃってるからだ」
「世界は無数に存在するよ もう何でもアリなぐらいにね」
「だから君がイメージできる世界は勿論存在するし想像を絶する世界だってちゃんと存在するんだ」

「そ…そういうものなのかな…」

「そういうものなの」
「ささ…早速別の世界へ……あ、そうそう その前に言っておくことがあった」

「………?」

「今までは私が世界を選び送ってきたから何時でも君を助けられたんだけど」
「君が君自身の力で別の世界へ行った場合私でも君が何処に行ったかはわからないんだ」
「だから今までと違って私は君を助けられない…それは覚えておいて欲しい」

「…でも牢姫が今まで私を助けてくれた事ってあったっけ?」

「それは君を助ける必要が無かったからだね」
「救い様が無くなるほど君がやられたら助けるつもりだった」

「………私が死ぬような事になっても助けてくれなかったわよね?」

「私は君が蘇えるのを知っている ただの死程度で助けるとは思わないで」

「………じゃあどんな状況だったら助けるつもりだったの?」

「君が君で無くなるような時とか完全に消滅させられそうな時とかかな」
「それくらい危ない状況にならない限り 私は助けるつもりは無かった」

「そう…わかった……これから先は私自身の力でそれらの危機から身を守らないといけないって事ね」

「わかってくれたなら良いんだ」

「…それじゃ…行くわよ」

私は壁を出す 今度は別の世界へ…
今居るこの世界でも無く…私の世界でも無い別の世界へ繋ぐ
………繋げられたかな?腕を入れてみる するとこの世界とも私の世界とも違う気温を感じる
私の世界はひんやりと涼しい世界だったが今繋いでいる何処かは何だか暑い

「………繋げられたみたい…それじゃ…行ってきます」

「あぁ…またね…霊禍」









「此処は…?」

世界を渡り 周りを見る 森の中だ

(…何だろう……この違和感……)

何かこの森は変だ 何処が変かはわからないが…森じゃない気がする

(とにかく警戒しないとね…)

思えば今までは確かに安全な状況下で世界に降り立った…
最初の世界では早々に人里へ行けたし
その次の世界とまたその次の世界では最初から保護された状態だった
その次の世界では師匠と一緒だった

だが…今は違う 最初から都合の良い状況では無い だが最悪でも無い
味方は私の世界に居る仲間くらいか 能力もある程度は使えるし護身も一応できる
………牢姫には感謝しなきゃね…一番最初の何もできないあの不安は今は無い

「…!」

何かの気配を感じる…

(2体…か)

木へ登り周囲を探る すると武装した二人の人間を見つけた

(あれ…?何処かで…?何処だっけ?)

その二人は見覚えのある二人だったが…思い出せない 誰だったか…

「居ないっすね〜」

「静かにしろ…潜んでるかもしれん 慎重にな?」

「了〜解」

(…ん〜?やはり…何処かで…)

何処かで聞いたあの二人の声にますます疑問が出る

(直接聞くか…アム…)

「仕事だね…」

アムを呼び出し 小声で話す

「あの二人を拘束して…話がしたい」

「解った」

命令すると同時にアムは認識阻害で誰からも認識できなくなる
…味方には見えるようにしてるのか 私は能力発動中のアムを認識できた

「ぐぁっ!?」
「んぅっ!?」

「死にたくなければ動くな」

「くっ…貴様は一体!?」

アムがあっという間に二人を拘束し武器も没収する 流石にこういうのには慣れてるな
これで会話ができるようになった 私は木から下りて二人の前に立つ

「アム…ご苦労様……さて、話したい事があるんだけど…」

「な!?貴様は!?クソ!こんな時に!」

一人が驚愕して叫ぶ

「え?…どういう事?………あ!ちょ…ちょっと!」

気が付けば二人はもう自害していた
口に毒でも仕込んであったのだろうか…

「そ…そんな…まだ…何もしてないのに…」

<ビー!ビー!ハンター死亡!ハンター死亡!ビー!ビー!>

「!?」

急に森に警報音が鳴り響く

「くっ…何がどうなってるの!?」

「主!此処は危険です すぐにこの場から離れましょう」

アムが手招きする 先導してくれるようだ
私はアムについていき二人の死体の場所から離れた







「しばらく此処に潜みましょう…」

ある程度進み茂みに隠れる
アムの認識阻害はどうやらアム自身だけでなく私にも同様の効果を与えられるようだ

「やり過ごせると良いんだけど…」

「やり過ごした所でどうしますか?」

小声で会話しつつ今後どうするかを考える
アムの様子を見れば先程の二人の武器を分解していた

「…何やってるの?」

「使えないかと思いまして…発信機か何かが無いかを確認中です」
「あ…心配しないで下さい 敵の武器を扱うのは慣れてるんですよ」
「よく潜入とかで武器は現地で何とかしてた事が多かったので」

「そういう事を聞いてるんじゃ無くてね…」

「え?あぁ…大丈夫ですよ ちゃんと組み立て方も解ってますから」

「…もう良いわ」
「そうね…今後の事だけど…とりあえず安全な場所に逃げたいわ」

「そうですね…とりあえず森を脱出しないといけませんね…はい武器です レーザー銃のようですよ」

アムはあっという間に銃を組み立てて一丁を私に渡す

「あの…提案ですが…その銃が無くても何時でも撃てるように」
「一度は主の能力で攻撃を吸収しておいた方が良いかと思いますが…どうでしょう?」

アムが私に提案する

「ん…そうね…試し撃ちも必要だし…やっておいた方が損は無いか…」

私はやや離れた場所に壁を出して試し撃ちをした アムも同様に壁に向かってレーザーを撃つ
これでこのレーザーは何時でも私の能力として放てるようになったわけだ

「思ったより威力低そうですね…」

アムが残念そうに呟く

「え?そう?結構強そうだと思ったけど…」

「主はもっと弱い攻撃と強い攻撃を見分けるべきです」

「うぅ…」

「でも手加減して攻撃する際には今のレーザーは十分使えそうですね」
「それより…そろそろ移動しましょう 早く森から脱出しないといけません」

「ん…わかった…」

再度アムと共に移動する







「そういえば主…いくつか聞きたい事があるのですが…」

移動中にアムが質問してくる

「何…?」

「主は飛行できますか?」

「………まだ無理」

「では…主の…我々が居る世界へ行く時はどれくらい時間が掛かりますか?」

「どうだろう?わかんない…」

「………飛行はともかく主の世界へは即座に行けるようになった方が良いですよ」

「う〜…そうね…あっちにはルクィも居るものね」

「では早速主の世界へ避難しましょう あそこなら安全に移動ができます」

「え?何で?」

「それは後から説明しますよ さぁ早く行きましょう」

「ちゃんと説明してよね?」

私は壁を出して即座に私の世界へと繋いだ
………なんか私ますます紫みたいになってきたなぁ…
似てるところは壁がスキマみたいな認識だからかな…



「お帰りなさいませ 新たに出せる攻撃が出来ましたよ」

屍狗が迎えてくれた 早速ノートを受け取る
私の要望通り威力や特殊効果が追記されていた ありがたい
ノートにはこう記されていた

使える攻撃(威力:特殊効果)
襲牙の攻撃
・炎(3600:火傷)
・雷撃(4200:追尾,麻痺)
空龍の攻撃
・棘(3000:貫通)
・毒針(2800:毒)
・真空波(5600:切断)
崩炉の攻撃
・レーザー(12000:貫通)
・砲撃(16000:火傷)
・ビーム(20000)
・ミサイル(14000:追尾)
アムの攻撃
・イビルレイ(3200:貫通,混乱,毒,麻痺)
グウィンの攻撃
・ディパンド・ソドム(24000:砂漠化)
絶鬼の攻撃
・蒼炎(8500000:焼却,猛毒,石化,能力低下,思考停止)
・光斬撃(7000000:断絶,追尾,混乱,麻痺,腐敗,五感不全)
四季映姫の攻撃
・通常弾幕(1000)

新規追加
その他
・レーザー(200:貫通)

「………この新規追加ってのがさっきのレーザー?」

私はアムに聞く

「えぇそうです 弱いでしょ?」

「今までで最低威力じゃない…てかこの威力の基準は何なの?」

「グレネード一発分…と言っても解りませんか…爆弾一発を威力100として扱ってますが」
「今は新規のレーザーを基準に考えた方が良いでしょう」

屍狗が私の質問に答える ぐれねーどって何だろう?まぁいいや、爆弾一発が100か…
どうやら私の仲間達の攻撃はどれも化け物レベルのようだ
まぁ映姫や絶鬼の攻撃はただ襲われてたのを壁で防いで得たものだが
というか絶鬼の攻撃の威力の高さは何なんだ?これ程までとは…
あの時魔物達がゴミのように死んだのが納得できる
でも私も奴の攻撃は受けたがこんなわけのわからん特殊効果は何も無かった…
手加減してたのかな?だとすると何故?

「………まぁ威力云々はどうでも良いとして…アム」

「はい…安全な移動についてですね?」

「うん…どうやるの?」

「簡単ですよ…ここは八雲紫のスキマ世界のようなモノです 出入り口は主が任意に作り出せます」
「外へ出る時わざわざ入ってきた場所と同じ所へ出る必要は無いのです」

なるほど…つまり危険地帯を通らずに目的地に行けるって事か
牢姫が色々と便利だと言っていた意味がようやくわかった気がする
私のこの世界と外の世界への行き来が早ければ敵の攻撃は即座に回避できる上
敵の死角に移動して攻撃できたり思いっきり遠くへ逃げる事もできる
幸い私の世界へ繋ぐのはかなり簡単だ 特に意識しなくとも行き来は即行で行えるだろう

「あれ?でも出て行く先が安全とは限らないんじゃない?」

「安全かどうか確認すれば良いだけですよ」

「いやだから………どうやって確認するの?」

「見れないんですか?」

意外だと言わんばかりに首を傾げるアム

「む〜…」

とりあえず私は出入り口となる壁を出して壁を睨む
やっぱり何も見えない

「見えないよぅ…」

ちょっと涙目になってアム達を見る

「いやいや…主…透過してない壁出してどうするんですか」
「ちゃんと向こう側が透けて見えるような壁を出せば良いんですよ」

「え?そうなの?む〜…」

今度は透過している壁を出してみる
まだ世界を繋いではいないので壁の先に見えるものは別の魔物達だ
力を込めて世界を繋ぐと森らしき景色が見えた

「あ…見えた…」

「確認できましたか?」

「う…うん…此処に繋がってるって事よね」

「そのまま出る事もできればその視界から一方的に攻撃できる筈だぜ」

グウィンが答える

「主がこの世界に逃げ込むだけで空間操作できない敵は詰みってわけだ」

「さらに外の世界からこの主の世界へは攻撃できません 全て壁に吸収され消滅しますからね」

ルクィがグウィンに続くように話す
本当ならこの私の世界はかなり安全な世界になるな…
私以外が此処に入ろうとすれば消滅して私の支配下になるのだから
ここまでくると便利を通り越してチートレベルだな

「空間操作できる相手だとどうなるの?」

「そのような敵は直接この世界に侵入したり無理矢理引っ張り出される恐れがあります」

アムが答える 絶対安全って訳では無いみたいだ
それに入る際に消滅するのは出入り口の壁を介した場合だけで
この世界自体には私の能力による消滅効果は無い…のかな?
やろうと思えば多分できると思うけど…私の世界だし
入られるより引っ張り出される事の方が多くなるだろうな…

私は透過壁を見る 私の世界で私が一々移動しなくても出入り口は移動できる様だ
それに複数出してあらゆる視点で外の世界を見る事もできる
途中森の中に複数の武装した兵達が居たが誰一人私に気づいていない
向こうからは認識できないみたいだね ホント便利で楽だなぁ…
こりゃ車の運転より遥かに楽だ…
ん?くるまって何だろう?……また変な電波を受信してしまった

「というか…何でアンタ等私以上に私の能力に詳しいの?」

ふと疑問に思った事を直接聞いてみる

『我々はこうしてそれぞれ固有の意思を持つが全て主の能力の一つとして扱われている』
『主の能力はそのまま我々自身を指す事にもなる 我々が我々を知っているのは当然という事だ』
『それに加えて我々はそれぞれ独自の知識がある 我々魔物は元主のリフの知識もある』
『それで我々は主の事をよく知りつつ主をサポートできると言うわけだ』

魔物達が一斉に答える

「………そっか…そうなんだ…」

それなら納得だ 仲間達が能力そのものだと言うのなら
私は私の能力を直接聞き知る事が出来る

「おっと…勘違いするなよ?あくまで能力の一つだ」

グウィンが私の思考を見抜いたかのように話す

『主の能力は我々の予想もつかないあらゆる可能性がある 我々にも解らぬ事はある』

「そうなの…」

改めて私は自分の能力の強さに感心した
紫がもし私の能力を知ってたのなら危惧して殺そうとするのは当然の話だな…

引き続き透過壁を見る 出口っぽいところを探してるが全然見つからない

「む〜…」

「あの…提案ですが…我々に調査させてはどうでしょう?」

「アンタ達が?」

「そうです 我々は主と違って死んでもこの世界に戻されるだけです」
「我々が外へ出て情報を収集しその情報を元に主が動けば効率的だと思いますが?」

「…どうやって情報をこっちに持ってくるのよ?」

「我々は外に出てる時 主の意思が無くても我々の意思でこの世界に帰れるのですよ?」

「そう…なんだ………じゃあお願いしようかな?」

「御意」

私の許可を得るとアムと襲牙、空龍は外の森へと調査に向かった
それを見送った後私は私の世界で一眠りする事にした





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あとがき

第二十一話終了 どうでしたか?

今回は説明回でした
ますます能力のチートっぷりが目立ってきましたね
でも良いのです 禍たんの目的は戦いに勝つんじゃなくて皆に認められて幸せに生きることだからね
禍たんの能力は身を護ったり敵を倒せても目的に近づくような事はできませんからね
全ては周りの人々の意思と禍たんの行動次第になります これが禍たんにとっての真の戦いになってるかと
勿論今後も牢姫や幽玄並にチートなキャラが出てくる可能性大です
それに能力が強すぎてさらに忌み嫌われる事でしょうしね

攻撃の威力ですが…これは適当です そんな気にしないでね
DBよろしくインフレ上等な奴等なんでw

世界の認識は色々あると思います
あらゆる全てを一つに纏めてそれを世界と呼ぶ事もできるし
家の中、部屋の中、野外、それぞれを別の世界として考える事もできると思います
ゲームの世界や空想の世界、そしてこの小説だってそれも世界と言える筈です
そういった無数のあらゆる世界観が次元として…あぁ…何か何が言いたいのか解らなくなってきた
言葉で表現できぬw

まぁアレです 沢山あって面白そうだねみたいな感じで…もうそれで良いですw

それじゃ何時まで続くか…完結できるかどうかは知りませんが 次話あとがきで会いましょう


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