東方輪廻殺
第二十四話 勧誘

「では何も知らないのですね?」

幽玄が男に問いかける
問われた男…ベリムは焦っていた
突如現れたたった三人の"敵"に手下を皆殺しにされたからだ
教皇という面影はもはや無くただの"意地汚い男"になってしまった
これでもこの世界を牛耳ってたのだがそれはもはや「かつて」の話になった

「あ…あぁ!俺が知る限りお前…いやあなた方が望むような術師は知らぬ!」

「…嘘は吐いてないようですが…」

幽玄はどうしようか?と言わんばかりに連れを見る
連れは二人居て一人は真っ黒い影の少女『焔 牢姫』
もう一人はその牢姫の唯一の肉親でもある隻眼の大男『クリェドゥス』

「だってさ?本当にこの世界に居るの?お兄ちゃん」

ベリムの回答を聞いて牢姫が兄に問う

「…う〜ん?だがこの世界に居るのは確かだ…何かしらの術で認知できなくなっているのか?」

「『解明』できないの?」

クリェドゥスは「解明する程度の能力」がある この能力にかかれば解らない事は無い…
少なくとも牢姫が知る上ではこの能力で解らなかった事は一度たりとも無かった
今回も解明できると踏んでいたのだがクリェドゥスは初めて『否』の答えを出した

「どうやら奴の方が上手らしいな…この世界に居るのは解るが何処に居るのかは解らん」
「距離が近ければ解るかもしれんが…ともかく此処教会には居ないな…」

「やれやれ…探そうにも痕跡すら無いんじゃねぇ…」

「痕跡が無い理由はどうやら世界や現実からしても奴は居ないという認識にされてるみたいだな」
「奴が何処で何をしても『そうあって当然』という扱いになっている」
「その仕組みで身を守っているのだろう…意図的なら用心深い事だな…」

痕跡が無い原因はクリェドゥスの能力で解明できるようだ
だがそんな事が解っても術師に辿り着けないのなら意味が無い

「さてどうする?牢姫よ…」

クリェドゥスが自身の長い黒髪を弄りつつ妹に問う

「………この世界に居るのは間違いないんだよね?」

「あぁ…今もこの世界に居るのは解っている」

「幽玄…君から何か良案は無いかい?」

「………世界や現実すら騙す相手なら私の考えなど役に立ちそうにありませんが?」

「無いよりはマシさ…何でも良いから言ってご覧」

「………世界の常識というものはその世界特有のものです」
「私達のように異世界を知る者ならば世界特有の常識と全世界共通の常識を見分けられると考えます」
「その全世界共通の常識から見て今居る世界の常識や現実は本当に自然とそうなるかを判断できれば…」
「世界や現実さえも気づかぬ矛盾に気づけば…一歩近づくと予想します」

「ほぅ…面白い考えだな…人の身でよくそんな考えができるものだ」

クリェドゥスは楽しそうに幽玄の考えに同意する

「…あまり褒められたものではありませんよ?単なる妄言と取ってもらって結構です」

「ふ…そう謙遜するな…時として子供の戯言が世界を変える事もあるのだからな…」

「ともかく今私が考えられるのはこれが精一杯ですね」

「なるほど…一理あるね お兄ちゃん…」

「言われなくても解ってる 偽りの森に矛盾があった そこから調べてみよう」

「偽りの森だね…さてベリム……ってありゃ?」

気が付けばベリムは既に逃げていた
そりゃ命を脅かす存在が目の前で意味不明な会話を展開してなお会話に夢中なら
その隙に逃げ出すのが普通だろう

「逃げられないの解ってるのかな〜」

「仕方あるまい…奴は我々より圧倒的に弱いからな 逃げるのは当然だ」

「捕まえてきましょう」

「うん…任せたよ 幽玄」

幽玄は即座にベリムの後を追った


「はぁ…しかし…こんな事になるなんて…お兄ちゃんが居ればスムーズに事が終わると思ったのに」

「お前が高望みするからだ」

牢姫が要求する術師の条件はこうだ
1.意思疎通ができる事
1.協力してくれる可能性がある事
1.非常に強力な存在である事
1.できれば人型で大きすぎないのが好ましい
以上の条件で捜索しまずはクリェドゥスの解明能力で会おうと考えたのだが
いかんせん強力過ぎたのか未だに会う事もできていない

「高望みなのはお兄ちゃんをアテにしてたからさ…どんな相手を見つけたんだい?」

「さぁな?だがあっけなく見つかるのはつまらないだろ?」
「それに案外奴は我々の行動を観察してるのかもしれんぞ?」

「え?嘘!?」

「…まぁ警戒はしておくことだ 俺より上の実力者なのは間違いないからな」




そんな牢姫達が居る教会から遠く離れたとある小屋にて

「師匠!このおっさん凄くね?我等が見てるの予想してるよぉー!」

水晶に映る牢姫達の様子を見ていた黄色い服を着た魔術師が興奮気味にクリェドゥスを賞賛する

「パチュリー…うるさい」

「ゴメンチ!でも何で師匠を探してるんですかねぇ?心当たりあります?」

「ん〜…わからないな…まぁ後で判明するだろう」

「じゃあどうします?暇だから会いに行って良い?」

「だ〜め 向こうがこっちを見つけてから接触しよう」

「ちぇー」

パチュリーと呼ばれた魔術師は引き続き水晶に映る牢姫達を観察するのだった




「連れてきました」

幽玄がベリムを引きずって戻ってくる

「ご苦労様 さてベリム君聞きたい事があるんだけど…」

「ひぃぃっ!頼む!殺さないでくれぇっ!!」

ベリムは泣き叫び命乞いをする
牢姫は真っ黒い影で行動している為三人の中では一番の人外に見える
だからとても怖いのだろう 牢姫の言葉はベリムには届かなかった

「…聞きたい事があるんだけど?」

「頼む!これ以上俺の人生を滅茶苦茶にするのは止めてくれぇ〜!!」

「哀れなものだな……幽玄…飯でも食うか?」

クリェドゥスがベリムを哀れみ 長引きそうだと判断して食事にしようかと提案する

「いえ…まだ食事には早いでしょう」

「では術師を見つける方法を共に考えようか」

「お願いだぁ〜!!助けてくれぇ〜!!!」

ベリムの命乞いをBGMに幽玄とクリェドゥスは相談を始めた





偽りの森
それは見た目は森だが全て人工物で造られた森な為こう呼ばれる ベリムの所有地の一つ
ここでは主にハンター達の訓練を行っているがそれ以外にも色々やっていた場所だったが
教皇ベリム亡き今 この森に存在価値は無い

「記録では32日前に大勢のハンターが事故死していますね」
「それ以降の記録に気になる点はありません」

幽玄がベリムから得た記録を調べながら話す

「その大勢のハンターが死んだ『事故』が数少ないこの世界の矛盾だな…」
「記録では事故死したハンター達の全員が銃の暴発で死んだとあるが…」
「全員の銃が全く同時に暴発して全く同時に死ぬなど偶然でもありえぬ事だ」

クリェドゥスが森に配備されたハンター達の位置や森の障害物等を考察して言う

「全く同時に死んだの?」

「解明したらその事実が見えた ハンター共が同時に死んだのは真実だ」
「問題は死んだ時間より過程だな…ハンター共は決して銃の暴発では死んでいない」
「牢姫…過去の虚像でこの森の過去を映せるか?まずはそれを見てみたい…」

「…解った…32日前の何時?」

「14時ですね」

「ん…じゃあ久しぶりに頑張りますかー」

森全体の様子が見られるよう飛行し三人は森を見渡す

「それじゃ…映すよ?」

「早くしろ」

過去の虚像が森の過去を再現する




あちこちにハンター達が居てそれ等が何かを探すように動き回る

『やったか!?』

少し大きい声が聞こえそちらを見る
二人のハンターが何かを追い詰めて射撃に成功したようだ

『いや…まだ生きているようだ トドメを刺すぞ』

『了〜解』

再度ハンター達が何かを撃つ

『今度こそやったか?』

『帰還するまで油断するな…仕留めたかどうかちゃんと確認するんだ…慎重に行くぞ?』

『了〜解』

ハンター達が何かを追い詰める 丁度ハンター達が邪魔で追い詰めてる何かが見えない

「牢姫…一時停止しろ 何を追い詰めてるのか見たい」

クリェドゥスの要望通り過去の虚像を一時停止する
そして三人は二人のハンターに近づき何を追い詰めているか確認した

「…!こ、これは…ベリムの記録では霊禍らしき者はこの世界に来ていない!どういう事!?」

追い詰められてる何かは満身創痍の霊禍だった
流石の牢姫もこれには驚愕する

「どうやらこれも矛盾の一つのようだな…ますますこの森で起きた事が怪しくなってきたな」

「…っ……再生するよ…」

虚像のハンター達が動き出す

『…驚いたな…まだ生きていたぞ』

『じゃあ今度こそ…これで終わりっすね』

そして虚像の霊禍は頭を撃ち抜かれ動かなくなった…

『…こちらC2 UNKNOWNを射殺しました』

ハンターの一人が通信を開始する

『UNKNOWNはまだ存在する 引き続き捜索し射殺しろ』

『了解しました………おい、行くぞ』

『えぇ〜?まだ居るんすか?面倒っす』

『面倒でも仕事だ…我々は教皇様を守らないといけないからな』
『この森に突然現れた者が教皇様を脅かす存在だったらどうする?解ったらさっさと行くぞ』

『へいへい…』

そこまで見て牢姫達三人は最初の時同様に飛行し森を見渡した




虚像の霊禍が死んで3時間は経っただろうか 未だにハンター達は何かを探している

「む!牢姫…一時停止だ またあの二人のハンターに動きがあるぞ」

「え?わ…解った…止めるよ」

そう言われて慌てて過去の虚像を一時停止する
例の二人の場所へ行くと何者かに拘束されているところだった

「こいつは…夜魔族だな…何故この世界に?この世界に夜魔族は存在しない筈だが?」

「この虚像の情報が嘘というのは?」

幽玄が質問する 今更だが幽玄は過去の虚像を初めて見たのだ
既に「真実しか映さない」という事を知ってる二人は一瞬目をパチクリさせる

「私の過去の虚像は私が望まなくても真実しか映さないんだ」
「その真実が書き換えられて無い限り嘘ってのはありえないよ」

「俺の解明を用いてもこれが嘘というのは考えられん もし嘘ならば我々は永久に術師に辿り着けぬだろう」

「…成る程…真偽はどうあれ信じるしか無いようですね…口を出してすみませんでした」

「…再生するよ?」



『死にたくなければ動くな』

夜魔族が二人のハンターに警告する

『くっ…貴様は一体!?』

夜魔族を知らないハンターにとってこの反応は当然だろう
むしろ会話ができるというだけで明らかな人外の夜魔族に
「何者か?」と問うこのハンターはかなり冷静だろう もう一人と違って混乱の度合いが違う

『アム…ご苦労様……さて、話したい事があるんだけど…』

そこで夜魔族の後ろからまた霊禍が現れた

『な!?貴様は!?クソ!こんな時に!』

霊禍の姿を見たハンターは驚愕し
そして歯を食いしばったかと思うと次の瞬間には死んでいた
もう一人の方もその様子を見て悟ったのか同様に自害していった
そこで牢姫は過去の虚像を一時停止しクリェドゥスに質問する

「急に止めてゴメン ねぇお兄ちゃん…なんでこのハンターは自害したのかな?」

「…簡単な事だ 拘束されたという事は尋問されるという事を知っていたんだろう」
「教皇を守る者として不利益な情報を渡すわけにはいかない…死人に口無し…だから自害した」

「成る程〜…あんな奴の為にここまでするなんてねぇ…」

「解ったら続きを再生してくれ…まだハンターが大勢死んだ原因が解っていない」

「ごめんごめん じゃあ再生するよ」


『え?……どういう事?………あ!ちょ…ちょっと!』

霊禍が慌てて二人の様子を診るが既に死んでいるのを確認し落胆する

『そ…そんな…まだ…何もしてないのに…』

<ビー!ビー!ハンター死亡!ハンター死亡!ビー!ビー!>

『くっ…何がどうなってるの!?』

『主!此処は危険です すぐにこの場から離れましょう』

アムが先導し霊禍はそれについて行く
牢姫達も同様に霊禍の後を追った


『しばらく此処に潜みましょう…』

アムが霊禍を茂みへと招く
そしてアムと霊禍を認識できなくなった

「あれ?今確かに此処に居たよね?」

牢姫が困惑する

「ほう…この夜魔族…能力持ちか…認識を阻害するらしいな」
「恐らく俺くらいしかこのアムとやらを認識する事はできないだろう」

「…見えてるの?」

「見えないが居るのは解る…そんな程度だ…」

「はぁ…じゃあ見失ったも当然じゃない…仕方ない…上空から観察しよう」

また牢姫達は飛行し森を見渡す

(………飛行…できるようにならないといけませんね…)

クリェドゥスに担がれてる幽玄は一人そんな事を考えていた





上空から森を見下ろして数分が経った頃急に森中が騒がしくなる
見た事も無い四足の魔物達がハンター達を食い荒らし始めたからだ
魔物達の狩りに混じってアムも確認できた

「あの魔物は…確か襲牙だったかな?」
「でも肝心の霊禍は何処に行ったのかな?見当たらないけど…」

牢姫は霊禍を探すが一向に見つからない
兄を見るとそれに気づいたのかクリェドゥスが話す

「霊禍は自身の世界に閉じこもっているようだな この森には居ないようだ」

「そうなの…う〜ん…霊禍の世界はスキマの世界と違って干渉できないからなぁ…困った…」

<全ハンターに告ぐ!全員撤退せよ!>

突如森に撤退命令が響く
それを聞いて生き残ったハンター達は次々と森から出て行った
だがアムと襲牙達の様子だけは変で右往左往してるが大してその場から動いていない
その事に気づいたのかアムと襲牙は突如森全体から姿を消した

「お兄ちゃん?」

「霊禍の世界に戻ったんだろう…だがあの場所にアムと襲牙を閉じ込めていたのは第三者だ」

「あれじゃないですかね?」

幽玄が森の入り口を指差す
そこには髪が光り禍々しいケープを着た派手な格好の女が居た

「…!コイツが目的の術師だな…姿が解れば俺の能力も精度が増す…見つけたぞ!」

「流石お兄ちゃん!早速案内して」

過去の虚像は解除して牢姫が兄を急かす

「勿論だ…行くぞ!」





教会から離れた小さな村の小さな家
牢姫達はそこに訪れていた
村人達から注目を集めているが三人は無視する

「ここに術師が?」

「あぁ…間違いない」

再三確認する牢姫の問いに若干うんざりしつつもクリェドゥスは答える
幽玄はその様子を見つつ小屋の戸をノックした

「はいは〜い いらっしゃい まぁ上がりなよ」

黄色に黒に近い赤の線が目立つ服を着た女が出てきて自己紹介や事情を話す前に上がれと招かれる

「貴女は…我々が来るのを知ってたんですか?」

思わず幽玄が女に問う

「勿論さ〜 我等を探そうなんて人はまず居ないからすぐアンタ等の事は認知できたYO」
「それよりさっさと上がれってのが聞こえないんかいワレェ!!」

いきなりキレたのでちょっと戸惑いつつ三人は小屋へと入る
そこには過去の虚像で見た例の女が居た

「ようこそ…それとパチュリー…客に向かってその態度は無いでしょ…」

「そんな常識は犬に食わせた」

「やれやれ…まぁ座って座って…どうせ長話になるんでしょ?」
「まずは軽い自己紹介でも…私の名は『幻祷 夢魘』知っての通り魔術師です」
「んでこっちに居るウザイ女が私の弟子の『パチュリー・ノーレッジ』という魔女だ」

夢魘は座布団を用意しつつ自己紹介を始める

「貴様等には我の事を『パッチェさん』と呼ぶ権利をやろう」

先程出迎えたパチュリーもといパッチェさんはうざいと言われた事を気にしてないようだ

(幻想郷のパチュリーと同じ容姿と名だが全然違うな…)
「初めまして…私は『焔 牢姫』…こちらが兄の『クリェドゥス』でこちらが協力者の『幽玄』です」

牢姫に紹介され二人は軽く礼をする

「さて早速本題だけど夢魘さんには私達に協力してもらいたくてわざわざ会いに来たんだ」

牢姫が話を始める 夢魘とパッチェさんは静かに話を聞く

「協力して欲しい内容はある娘を鍛えて欲しいから」
「まだまだ未熟な子でね…まともに能力を扱えていないんだ」
「そこで貴女に指導…及び鍛えて欲しい…お願いします!」

牢姫が頭を下げ 幽玄とクリェドゥスも頭を下げる
頭を下げる事で了承してくれた方が力ずくで従わせるより遥かに楽だからだ
それにクリェドゥスより強い事は明らかなので戦闘によって消耗するのは避けたかった

「ある娘というのは?」

「この子です 名を『博麗 霊禍』と言い次元を司る程度の能力を持ちます」

夢魘が写真を受け取りパッチェさんも写真を覗く

「ふぅ〜ん…でもこの子一月前に私が殺したけど生きてるの?」

「え?」 「どういう事だ?」

牢姫とクリェドゥスが驚きの声をあげる

「教皇に依頼されて私が殺した」

夢魘は淡々と言う

「教皇ってベリムの事か?だが奴は何も知らなかったぞ?」

「それは師匠のえげつない能力の所為やね」

パッチェさんがクリェドゥスの問いに答える

「私は忘却を司る程度の能力を持ってます 私という存在はあって無いようなものですね」

夢魘が自身の能力を教えてくれた
話によればこの能力であらゆるモノ…世界や現実からも忘れられたり忘れさせたりできるそうだ

「まぁ私は有事の時しか能力や術は使わないんですけどね」

「だからこの我にも師匠を認識できるし貴様等も師匠を発見できたというわけだ」

「霊禍さんは何故死んだのか…私に殺された事すらもわからないでしょうね〜」

「そうだったの…でも大丈夫…霊禍は生きている 転生者みたいなものでね…」
「それで…話を戻すけど協力してくれる?」

牢姫が返事を促す

「そうね…牢姫さん…ごめんだけど私は協力しない」

「それはどうして?」

「単純な話 つまらないからよ…私は何でも屋だけどデウス・エクス・マキナとかでは無いわ」

「似たようなモノだけどな…師匠チートだし」

「パチュリー…うるさい」
「ともかく!何かが出来ないからと言って誰かをアテにするのを私は好まないの」
「むしろ困難に向かっていく勇姿を見るのが好き だからそうね…関わるなら私は障害になるわ」

「…っ!」

牢姫が殺気を出しそこでパッチェさんが止めに入る

「おっと慌てなさんな…師匠は協力しない…それだけの話だ牢姫さんよ」
「協力ならこのパッチェさんが協力してやろう 暇だったしな どや!?」

パッチェさんがどや顔で牢姫達を見る

「………まぁ良いか パッチェさんも力はあるようだしね…じゃあ協力してもらおうかな」

「良いだろう!この我が霊禍嬢を鍛えてやるぜヒャッハァー!」

「あら?パチュリー…私との修行はもう良いの?」

夢魘が意外そうに弟子に問う
先程と打って変わってパッチェさんの表情に影が差す

「もう十分だ… これ以上は我自身の問題だ…今までありがとうよ」

「そう…なら私からは何も言わないよ…」

「まるで一時の別れが一生の別れのような言い方ですね…」

幽玄が二人のやり取りをみて呟く

「残念ながら本当に一生の別れなんだよ幽君」

パッチェさんがチッチッチッと指を振りつつ話す

「先程説明があった通り師匠は忘却を司る…一度離れればもう師匠の事は忘れてしまうのさ」
「それに師匠は同じ場所にずっと永住はしない 我と貴様等が離れれば師匠はこの世界から去るだろう」
「そうなればもう二度と見つけることはできなくなる 会えるかどうかは運次第だ…」

「忘れてしまう…か……悲しい存在だな…」
「自身が居た証明が何一つ残らない事に不満は無いのか?」

クリェドゥスが夢魘を見て嘆く

「…不満とかそういうものはもう忘れちゃったよ」

夢魘は一言だけ答えた

「………本当に悲しい存在だな…お前は…」

「それじゃ…行こうか」

牢姫が世界を紡ぐスキマを開ける

「さぁて!霊禍嬢はどんな娘か楽しみだなぁ!」

パッチェさんは我先にと迷う事無くスキマへ入っていった

「お邪魔しました」

牢姫達も続いてスキマへ入っていく

「………さらばだ…縁があればまた会おう…」

夢魘は牢姫達を見送った後その世界から忘れ去られた







誰も居ない博麗神社にスキマが開かれそこからパッチェさんが勢い良く飛び出す

「何だぁ?誰も居ないじゃねぇか!ふざけんなよこの野郎!」

パッチェさんは誰も居ないことを確認し持っていた本を地面に叩きつけてキレる

「霊禍に会わせる前に実力を見ておきたいからね」

後を追うように現れた牢姫が神社へ連れてきた理由を話す

「ほぉ…この我の力を疑うというのか牢姫さんよ」

「疑うわけじゃない…使えるかどうか確認するだけだ…じゃ幽玄…相手してあげて」

「…わかりました」

幽玄が一歩前に出てパッチェさんと対峙する

「良いだろう…我の力…とくと味わうが良い」

「………」

「ではこの小石が地面に落ちたときが合図だ いくぞ」

クリェドゥスが小石を放り投げる
そしてその小石が地面に落ちたと同時にパッチェさんは地面に叩きつけられた

「………痛いお」

「…これで終わりでは無いですよね?」
(思ったより頑丈ですね…)

幽玄が距離を取りつつパッチェさんの様子を伺う

「あたぼうよ!パッチェさんをただの魔術師だと思っちゃいけないぜ」
「この我はそりゃもう凄い奴から鍛えてもらった気がする程の実力者だぁー!!」

パッチェさんは勢い良く飛び上がるが立ち上がったと同時にまた地面に叩きつけられた

「バカめ!それは本体だ!」

今度はプルプルと震える腕で身体を支えゆっくりと立ち上がる

「えぇ…知ってますよ…」
(どうやら頭はよろしくないようですね…)

「んじゃ反撃しようっと…とりゃー」

情けない掛け声を出しつつ腕を幽玄に向けそこから巨大なビームが放たれる

「………ほぅ?大抵の奴は油断して今ので死ぬが…幽君お前強いな!」

幽玄の背後からの蹴りをバリアで防ぎつつパッチェさんは幽玄を賞賛する

「接近戦は苦手だがやるしかあるまい!」

パッチェさんはビームの放出を止めて幽玄に特攻する
意外と素早い攻撃を繰り出すパッチェさんに幽玄はパッチェさんへの評価を改めつつカウンターを入れる

「ぐふぅっ!お…お前の攻撃を受けて倒れなかったのは我が初めてだぜ!」

「………」
(全て急所に当てたのにダメージが無い…?これは一体?)

「シカトかよ!パッチェさん超ショック!」

「…もう良いんじゃないんですかね?」

幽玄が構えを解いて牢姫を見る

「うん…そうだね 思った以上に力はあるみたいだしもう良いよ」

「何だもう終わりか…つまらん」

パッチェさんは口を尖らせブー垂れる

「不安要素も出来たけどね…」

牢姫は若干呆れてパッチェさんを見る

「それじゃパッチェさん…霊禍が居る世界に行って修行してくれる?」

牢姫がクリェドゥスの能力で判明した霊禍が居る世界へと繋げる

「ふ…水舟に乗ったつもりで任せておけ」

「水舟って何よ…聞いた事も無いんだけど?信じていいの?」

「安心しろ…牢姫さん…『信じるものは足元を掬われる』って言うだろ?」

パッチェさんは牢姫達にそう言ってスキマへと入っていった

「…もの凄く不安になってきた…」

「私はどうしましょう?」

幽玄が問う
パッチェさんと一緒に行こうと思ったのだがスキマに入る前に閉じられて行けなかったのだ

「もうしばらく私に協力して?それじゃ行こうか」

「…やれやれ」

霊禍が居る世界とは別の世界へと繋ぎ牢姫達三人も神社から姿を消した





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あとがき

第二十四話終了 どうでしたか?

パッチェさん出現ですよ!頭文字にCがつくアイツです当然ギャグ要因です
それにしてもパッチェさん使いやすいね
これからパッチェさん使って色々できると思うとwktkします

Cパチェ「こんな辺境なSSにも出演するとは流石我は格が違った!」

次からまた霊禍視点に戻ります
果たして霊禍はルゥ達を見つけられるのか!?

それじゃ何時まで続くか…完結できるかどうかは知りませんが 次話あとがきで会いましょう


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